僕は、俳優になってから、黒澤監督の傑作群を観るようになりました。
ちょうど、演技の道にいよいよ入るという直前の1991年に『七人の侍』の
リバイバル上映があり、東宝の劇場で観ることが叶い、そこから”黒澤映画”を
遡っていくようになったのです。
やがて、
監督のことを知るにつれ、
日本の映画監督たちや関係者、あるいは批評家の方々が、
「晩年は、黒澤監督もその力が衰えた」
と語る論調をよく目耳にするようになりました。
僕はその評価について、いつも
「何か違うな…??」
という思いを感じていました。
69歳〜70歳(映画公開時)といえば、特に当時は、一般の仕事ならすでに定年退職し、
余生をゆっくりと過ごしている年代です。
「晩年は、衰えたよね…」
というような批評は、
誰でも容易に言える言葉ではないでしょうか?
(※ 蛇足ですが、「ハリウッド映画も、もうアイデアが枯渇してるよね」という論調にも
僕はいつも首を傾げています。枯渇してるよね、と簡単にいう人ほど、ハリウッドの
クリエイターや脚本家たちの本当の懐の深さを知りません)
この年齢で、陣頭指揮を取り、直接製作費12億4800万円という巨額の予算を効率よく使いこなし、
超大作に仕上げ、カンヌ映画祭グランプリまで獲得してしまうような、
揺るぎのない「ヴィジョン」を有する映画監督がいるでしょうか?
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