昨年9月に発進した菅政権は、歴代3位の高支持率で順風満帆の船出に見えた。
携帯電話料金の値下げや不妊治療の保険適用など、国民の懐を軽くする政策、言い換えると、お金をばらまく政策を打ち出したのも支持を上げた理由だった。 特に携帯電話料金の値下げに対し、野党は有効な別プランを提案もできていなかったので、「携帯料金を値下げしました」だけで総選挙に突入されていたら、自民党圧勝だったと思う。 国家像を語るのではなく、細部の具体的政策を実行していくことで庶民派宰相のイメージを作る作戦は成功していた。
しかしながら、昨年12月末の世論調査で、支持と不支持が拮抗するまで菅総理の支持率は下がった。 コロナへの対応のまずさに対し、国民の怒りが頂点に達したのだ。
野党の支持率が上がらないことから菅政権は安倍政権同様に長期政権となるのではないかという予測があった中で、菅政権発足前からすでに「安倍政権後の政権は短命に終わる」と予想していたのが、佐藤優さんだ。
安倍首相が辞意表明する直前に佐藤さんと山口二郎さん(法政大学教授)が上梓した『長期政権のあと』(祥伝社新書)について、2人が週刊ポスト誌上で対談している。 そのやり取りを抜粋してみる。
山口:安倍政権で7年8か月の間に問題が積み重なっている状況で、さらにコロナ禍での突然の辞任ですから、次の総理大臣は大変な苦労があると思います。 出馬を表明した岸田(文雄)政調会長が「貧乏くじであろうとも」という言い方をしたのは、客観的に見ているなと思いました。
佐藤:私も全く同じ認識です。 安倍政権の残務整理では大変な不満が出てくるはずで、冷静に考えれば、次期政権は短命に終わる可能性が高い。 ですが、目の前に権力があれば3日でもやりたいのが政治家の本能です(笑い)。
山口:安倍首相の前に長期政権を築いたのが小泉純一郎首相でしたが、そのあとを引き継いだ安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の各政権はいずれも短命に終わり、最後に政権交代を招きました。 小泉政権と安倍政権には、官邸への権力一極集中という共通点がありますが、安倍政権について、佐藤さんは「首相機関説」を唱えていましたね。
佐藤:ええ。 カリスマ性で自ら政治イニシアチブを取った小泉さんと違い、安倍さんは側近に政策の立案を任せ、やりたい政策にはアクセルを踏み、そうでない場合にはブレーキをかけてきました。 これは上がってきた事案を裁可して同意できなければぷいと横を向いた戦前の天皇に近い。 まさに「天皇機関説」ならぬ「首相機関説」です。
山口:「君臨すれども統治せず」ですね。 ただし、政権末期はその綻びが目立っていたように思えます。 特にコロナ危機以降は、「マスクの全戸配布」「学校の9月入学」など、忖度官僚とか官邸官僚と呼ばれる人々が何か思いつきで提案しては失敗し、それを繰り返した。 政府としてグリップが効かない状態で漂流していた感じがします。 しかし、「(政策の失敗ではなく)病気でやむなく退任」と強調されている以上、後任が安倍機関による政治を否定するのは極めて難しい。
佐藤:その通りです。 病気についてあげつらうことは人間性が問われるという日本人の感覚として、後任は安倍機関のシステムにいた人にならざるを得ない。 菅さんであれ岸田さんであれ、構造は大して変わりません。 (ここまで抜粋)
安倍氏のいわゆる「桜問題」は、官房長官として安倍政権を支えた菅氏にボディブローとなって影響を与えている。
加えて、コロナ禍で国民が苦しんでいる中、株価がバブル以来の上げ幅となり3万円近くになっているが、アベノミクスが金持ち優遇の政策だったと指摘されるのは必至だ。 これも一緒に推進してきた菅氏にとって影響を及ぼすだろう。
「北海道と長野の補選で負けたら政局」……
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