2021年 第 1号 【長尾和宏の「痛くない死に方」】
謹賀新年。長尾和宏です。
しかしこれほど、あけましておめでとうございますという言葉が空疎に聞こえる年が、
かつてあったでしょうか? 人と会うことも罪。酒を飲んで笑うのも、歌うのも、罪。
それが医者ならば、重罪……。僕は、昨春から、自主隔離をしています。仕事以外は
誰とも飯を食わず、誰とも酒を飲まず、実は一人、家族から離れてアパートを借りて籠っ
ています。しかしこれは、僕に限ってことではなく、病院勤務でも在宅医であっても僕の
ように自主隔離を自分に課しているドクターは少なくないはずです。
僕はもう、ある程度年齢がいっているから、孤独もそれほど怖くはありません。
このお正月も、夜はひたすら音楽を聴き、読書を楽しんでいました。
むしろ、コロナによって新しくやってきた「孤独」を、楽しむ夜もなくはありません。
しかし、僕より若い医者たちは、ほんとうにこれはしんどいことだと思います。
恋人に会えない医者、小さな子供と何カ月も会っていない医者、老親といつ会えるかわか
らない医者……。春からもう、10カ月。
一体いつになったら、報われるのだろうか。どうしてこんなことになったのだろうか。
そう思っている若い医者は、大勢いるはず。
それでも、とにかく一人でもいいから、コロナから命を救いたい。
ただただ、それだけなのです。目の前の命を救うためには、自分の私生活をすべて投げ出せる。
だから、この旭川医大のニュースなんていうのは、本当に残念です。
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旭川医科大学病院(北海道旭川市)での新型コロナウイルスの患者受け入れを巡り、
大学の吉田晃敏学長が受け入れの許可を求めた同院の院長に「その代わりお前がやめろ」など
と発言したとされる問題で大学を所管する文部科学省が、発言の事実確認を行っていることが
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