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高野孟のTHE JOURNAL Vol.480 2021.1.11
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1081》
米中はゼロサム関係ではない
ーー米国はなぜ対中ヒステリーに走るのか
【2】《CONFAB No.480》閑中忙話(1月3日~9日)
【3】《FLASH No.390》
菅義偉政権はもはや最末期の断末魔状態に陥った
ーー日刊ゲンダイ1月7日付「永田町の裏を読む」
から転載
【4】《SHASIN No.423》付属写真館
■■ INSIDER No.1081 2021/01/11 ■■■■■■■■
米中はゼロサム関係ではない
ーー米国はなぜ対中ヒステリーに走るのか
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1月7日付毎日新聞で坂東賢治=専門編集委員が「米
中はゼロサム関係か?」と題したコラムを書いていて、
この設問の仕方は正しい。設問それ自体に答えが含まれ
ており、「米中対立激化で米政界やメディアには冷戦時
代の米ソ関係のように中国の得点を米国の失点と見る
『ゼロサム思考』が広がった。……〔が、この〕思考で
米中どちらかの選択を迫るような手法は簡単には通用し
まい」というのが結論である。
それはその通りだが、問題は、なぜ米国社会の上から
下までが、中国を、ゼロか100か、敵か味方か、死ぬか
生きるかといった極端な(思考と言うのも憚られる)激
しい憎悪感情でしか捉えられなくなってしまったのかと
いうことで、それについてこのコラムは何も言及してい
ない。
●自分を見失ってしまった米国
私に言わせればその根本原因は、米国が、自らの衰弱
を薄々は自覚しつつも、それを正面切っては認めたくな
いがゆえに、誰かが悪いというように他所に責任転嫁し
て束の間の安心を得ようとする、「対中ヒステリー」と
も言うべき病的な集団心理に陥っていることにある。
このことは十分に予想されていたことである。今から
16年前になるがINSIDERの2005年1月27日号は、以下の
3つの文献を引用しつつ、「米国がなしうることは『唯
一』も『超』も付かない、ただの『大国』の1つ(とは
言っても最大の大国)になることを目指すことである」
と指摘した。この記述は、高野孟『滅びゆくアメリカ帝
国』、06年刊に収録されている(同書P.212、P.257な
ど)。この課題設定が今尚できていないことが米国の混
迷の根源である。
3つの文献とは…
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