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高野孟のTHE JOURNAL Vol.481 2021.1.18
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1082》
暴走し自壊する米国の民主主義
ーートランプ流ポピュリズムの無残な末期
【2】《CONFAB No.481》閑中忙話(1月10日~16日)
【3】《FLASH No.391》
心の通う対話の要諦は相手の目を見て自分の言葉
で語ることーー日刊ゲンダイ1月14日付「永田町
の裏を読む」から転載
★「付属写真館」はお休みです。
■■ INSIDER No.1082 2021/01/18 ■■■■■■■■
暴走し自壊する米国の民主主義
ーートランプ流ポピュリズムの無残な末期
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トランプ米大統領が支持者を煽動して連邦議会に突入
させた事件は、現職大統領による自国に対する「クーデ
タ未遂」という世にも珍しい出来事と呆れられた。文筆
家の諸岡カリーマは1月16日付東京新聞のコラムで、衝
撃を受けた米国の政治家たちが「バナナ共和国や第三世
界の国のできごとのようだった」と論評していることに
反発し、バナナの中南米にせよ第三世界の中東にせよ
「民主的に選ばれた政権がアメリカの息のかかったクー
デタで潰されてきた歴史を忘れてもらっては困る。こん
なジョークがネット上に出回った。『コロナ禍の渡航制
限により、アメリカはお家芸のクーデタを、やむなく国
内で実施した』」と書いた。
その通りで、民主主義の本家を僭称する米国は、世界
のあちこちにCIAの秘密工作班や大掛かりな軍隊を送り
込んで気に入らない政権を暴力的に転覆し、その瓦礫に
米国流民主主義の白い花を植え付けることを自らの「天
命(マニフェスト・ディスティニー)」と見做してき
た。このような、民主主義を唯一絶対の超越的価値であ
るかに奉ってそれを全世界に普及することが使命である
と思う一神教的な誇大妄想は、コロナ禍のせいというよ
りも、それ以前に世界資本主義のグローバル化の終焉と
いう歴史的制約のために、もはや行き場を失って自国へ
と逆流し、議事堂の玄関に流れ込んだのである。
帝国としての米国が、(かつてゴルバチョフが旧ソ連
をそうしたように)その帝国性を自ら解体して、「超」
の付かない単なる「大国」の1つとして国際社会の中に
そこそこの「居場所」を見つけることが出来ずにのたう
ち回った挙句、自傷行為に走ってしまったのがこの姿で
ある。
●民主主義の壊し方
米国がさんざん活用してきたのは、古典的な軍事クー
デタだが、これは近頃はもう流行らない、とケンブリッ
ジ大学政治学教授のデイヴィッド・ランシマンは言う
(『民主主義の壊れ方』、白水社、2020年11月刊
https://amzn.to/38XyT3z )。軍事クーデタは目に見え
て民主主義を葬るやり方だが、それに対して選挙や国民
投票などを行い、口では民主主義と言いながら、時間を
かけて権力者が思うままに力を振るうことが出来る体制
を作り上げてしまうクーデタもある。「これは民主主義
にとって21世紀最大の脅威であり、インド、トルコ、フ
ィリピン、ハンガリー、ポーランドなどの国に見られ
る。そしてアメリカでも同様のことが起きている可能性
がある」(ランシマン)。
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