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週刊 Life is Beautiful 2021年1月19日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん ソフトウェアに飲み込まれる自動車業界 このメルマガでも何度か引用していますが、Marc Andreessen が2011年に書いた「Why Software Is Eating the World」という文章は、10年後の今の世の中で起こっていることを理解する上でとても役に立つので、まだ読んだことのない人は、是非とも読んでいただきたいと思います。 自動車業界がまさにその典型的な例で、勝負がハードウェアからソフトウェアに移りつつある中で、ハードウェア重視で長年ビジネスをしてきた既存の自動車メーカーが、ソフトウェアのDNAを持つTesla や中国のEVメーカーとまともに戦えない状況になりつつあるのです。 私がこんなことを書くと、「トヨタ自動車が電気自動車を作ろうと思えばいつでも作れる」「電気自動車の市場が十分に大きくなってから進出しても十分に間に合う」と指摘をする人がいますが、それは大きな間違いです。 電気自動車の時代になると、「ソフトウェアで差別化すること」がものすごく重要になります。私が3年以上前に購入した Telsa のModel X は、頻繁なソフトウェア・アップデートにより、いまだに進化を続けていますが、こんな素晴らしい経験をトヨタ自動車が提供することは、カルチャー面でも、ビジネスモデル面でも無理なのです。 トヨタ自動車としては、4年ごとの大幅なモデルチェンジにより、旧モデルを陳腐化させて買い替え需要を掘り起こすことがなによりも重要で、一度売ってしまった自動車をソフトウェア・アップデートにより進化させるインセンティブなどこれっぽっちもないのです。 さらに、ハードウェア重視の企業カルチャーから考えると、Tesla のようにソフトウェアを毎月のようにアップデートするなど、社内プロセスがそれを許さないのです。特に新しく追加した機能のために不具合が生じたりすれば、担当者のクビが飛ぶような「失敗を許さないカルチャー」の中で、リスクを追って機能追加をしようなどという人は現れないのです。 自動車業界にとってのソフトウェアの需要性に関しては、最近 Automotive News Europe が公開した「Nvidia CEO says software will soon define the car, drive profit」というインタビュー記事が素晴らしいので、自動車業界に少しでも関わりがある人は、是非とも全文を丁寧に読んでいただきたいと思います。 特に重要な点は、将来の自動車メーカーは、ハードウェアはコストで販売し、ソフトで年間5000ドルの売り上げをあげるようなビジネスになる、という指摘です。 Tesla は近いうちに Model 2 という Model 3 をさらに大衆化した電気自動車を中国初で販売すると噂されていますが、その時代になると、自動車の販売からはほとんど利益を上げず、自動運転機能をサブスクリプション・サービスで提供することにより利益を上げる会社に変わると私は見ています。 Nvidia のCEOが指摘するように、年間5000ドルという価格が適切かどうかは不明ですが、そんな自動車を百万台市場に持っているだけで、年間 $5 billion の祖利益(流通コストはほぼゼロなので、売り上げのほぼ100%の祖利益になります)を上げられる計算になります。 自動車業界のデジタル・トランスフォーメーションとは、まさにこのことを示すのですが、残念ながらトヨタ自動車はいまだにソフトウェアは「仕様書だけ書いて外注に丸投げするゼネコン方式」で開発しており、どう考えても Tesla とは勝負出来ないし、万が一 Apple までもが自動車業界に参入してくれば、その時点でゲームオーバーになるように私には見えます。 Education as a Service 米国では、COVID-19 の蔓延のために多くの学校は閉鎖されたままです。そのため、生徒たちは Zoom を使って先生の授業に参加し、宿題はオンラインで提出し、必要に応じて先生から(これも Zoom で)個別指導を受ける、などの形をとっています。 当然ですが、こんな形では生徒たちの多くが授業に集中出来ず、この時期に義務教育を受けたことが、彼らの将来にとって大きなハンデになる可能性があると心配する教育者たちもいます。 大変大きな問題ですが、私にはこれが「大きなビジネスチャンス」でもあると考えています。 そもそも、クラスの全員に対して同じ講義を一方通行で与えるという授業の形式そのものに大きな問題があると私は考えています。 授業のトピックに対する理解度がさまざまな子供たちが、全員同じペースで授業を受けるということにそもそも無理があるのです。この形式だと、一度、ついていけなくなると、その後の講義の内容が全く理解できなくなってしまうため、授業がひたすら時間だけを浪費する、無駄で苦痛なものになってしまうのです。 特にこの傾向は、積み重ねの学問である理数系の授業に多く、小学校の時に一度落ちこぼれてしまうと、中高の大切な時期に、まともな理数系の教育を受けられない状況(=授業には参加しているものの、全く頭に入ってこない状況)になってしまうのです。特に日本の場合「文系」という逃げ道が用意されているため、「3%の食塩水1000グラムには塩が何グラム入っているか」のような単純な問題すら答えられない「使えない大学生」を量産することになってしまっているのです。

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