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【Vol.361】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「ワクチン大臣設置、厚労省の迷走の背景に何があるのか?」  菅内閣は、ワクチン担当大臣に河野太郎規制改革担当相の兼務を指名した ようです。これに対しては、どうして田村厚労大臣が担当しないのかという 疑問の声が上がっているわけですが、確かに不自然であるのは事実です。  ですが、ワクチンに関しては、日本の場合は「どんなに救命効果があって も、副反応による被害者サイドは絶対に受け入れず、被害者の正義を振りか ざしてワクチンを潰す」という伝統があるわけです。勿論、悪いのは被害者 ではありません。「被害者の正義」に乗っかるメディアと、攻撃されるとサ ッサと逃げ出す当局に責任があるわけです。  今度という今度は、そのパターンを踏むと大変なことになります。ですか ら、メディアが暗躍して、世論が闇の方へ誘導されて、当局がビビって腰砕 けになる前に、太郎さん的なスピードで、ワクチン接種率を巡航速度まで持 って行こうというのは理解できます。  そもそも菅内閣のワクチン戦略は、認可を先送りして英米に先行させると いう作戦でした。まず数百万あるいは数千万の単位で治験をしてもらい、そ れどころかポジティブな集団免疫効果についても顕在化した後で、国内での 認可をすればメディアの攻撃もかわせるし、何よりも接種率をマックスに持 って行ける、そう考えていたのだと思います。  ただ、ここへ来て感染拡大が大変な状況となり、医師も看護師も、そして 医療関係の施設も日本型組織が苦手としている「臨機応変で柔軟な」対応を 余儀なくされています。そこへ更に負荷をかけるものとして、ワクチンの大 量/迅速接種をアレンジさせるのは大変というのは分かります。  もう厚労省の正規の指揮命令系統を動かしていては、五輪など全く見通し が立たなくなるわけで、そこを太郎さん型の強行突破で行こうということだ と思います。  ですから、現実的でしかも緊急避難的な判断としては、分からないではあ りません。ついでに河野流のサイエンス情報公開を使って、副反応への懸念 をメディアが煽るのも抑えてもらえればということなら、余計に納得感はあ るわけです。  そうではあるのですが、そもそも新型コロナの感染拡大が始まって以来の 「迷走」を振り返るのであれば、そう簡単に「緊急避難的に行けばいい」と は言えないものがあるのです。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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