2021年 第 3号 【長尾和宏の「痛くない死に方」】
長尾和宏です。
〈あの日から何度目の夏が来ただろう? 出逢ったり別れたり 繰り返し
美しい思い出も大切だけど 人生はこれからを夢見ることさ〉
これは、大好きな桑田佳祐さんが、ライブのときに名曲「みんなのうた」の前に
歌う、オリジナルのフレーズです。僕も何度か生のライブで聞きましたが、
このフレーズを耳にするたび、なぜか涙が溢れます。
今の僕は、こんな気持ち↓
〈あの日から何度目の冬が来ただろう? 出逢ったり別れたり 繰り返し
悲しい思い出は忘れないけど 人生はこれからを楽しむことさ〉
1月17日。阪神淡路大震災から26年。なんとあれから四半世紀が過ぎた。
6434人の犠牲者の魂に静かに追悼を捧げた。新型コロナウィルスの影響によって
予定されていた追悼イベントは、ほとんど中止となってしまった。
あの日。僕はまだ36歳だった。市立芦屋病院の勤務医だった。
36歳の僕が、人生で初めて「この世の終わり」と思った日だ。無我夢中で、野戦病院
と化した病院で、被災者の治療にあった。自分も死ぬかもしれない。
しかしあれから26年。僕はまだ、生きている。
生と死を分けるもの。それはなんだろうか…生き残った自分ができることは果たして
何なのだろうか。あの日がなければ、僕は病院を飛び出して開業医にはなっていなか
ったかも、しれない。あの日が、僕の運命を変えた。
あの日のトラウマを抱えながら、僕は26年目の今日を、生きている。
あの震災のトラウマに寄り添った精神科医安克昌(あんかつまさ)先生の『心の傷を癒す
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