■採用は社長の勘と妥協
経営は「ヒト」「モノ」「カネ」「時間」「情報」が重要だと言わ
れている。だが、中小企業の経営ではスタート時は「ヒト」「カネ」
「社長」の3つだ。さらに1つ加えるなら「運」だ。
まずは「ヒト」についてだ。ヒトに関係する経営のポイントは、大
きく分けて「採用」「教育」「コミュニケーション」の3つある。
採用は「新卒採用」と「中途採用」がある。スタートしたての会社
は、ほぼ中途採用のみだ。新卒採用を始めるのは、会社が会社らし
くなってくる3~5年後だ。
創業時の採用のポイントは、社長の勘だけが頼りだ。人を「選ぶ」
というより「妥協」で決めることになる。どのくらいの人までなら、
一緒に働けるかな、という視点を持たなければ採用は無理だ。
面接にあたる人は、誠意を持って、自然体で向き合うことだ。あり
のままを見てもらい、その人についても、できる限りを知ることだ。
そうするから、短期間で退職というミスマッチを防げるのだ。
★
人が入社して来たら、次に行うのが教育だ。大事なことは最初から
「教育しよう」と思わないことだ。新人社長に幹部の教育などでき
るわけないのだ。
そもそも人は、自分でその気にならない限り、成長しないものだ。
もちろん、教育しなくていいということではない。期待せず、簡単
なことだけを淡々と教え続けるのだ。
世の中には色々なセミナーや研修があり、基本的に素晴らしい。た
だ、何を取り入れるかは社長の判断だ。今いる幹部や社員のレベル
にあった、学びの機会を提供するのがポイントだ。
最初は社長が噛み砕いて伝えて消化してもらう必要がある。その上
で外の研修に参加させる。社長だけが学んだり、人に任せはだめだ。
社長と幹部、社員が同じことを学び、価値観を揃えるべきだ。
★
社長が行う社員教育では、同じことを繰り返し伝えることだ。こち
らが思うほど、社員は覚えていない。ザルに水を入れると、ほとん
どが流れてしまって溜まらないのと同じだ。
だが、よく見るとザルは濡れている。社員教育はその程度、つまり
濡れている程度でいいのだ。もし乾きそうになったら、また水を入
れて濡らす。
必死に水を溜めようとすると、溜まらないことにイライラし、スト
レスになる。だから、忘れて当たり前だと思って、繰り返し教える
のだ。ザル教育だ。これが、中小企業の正しい社員教育だ。
間違ってザルの穴が塞がって水がたまりだしたら超ラッキーだ。そ
もそもザルどころか、枠しかない社員もたくさんいる。それでもい
つかザルくらいにはなるものだ。それくらいでちょうどいいのだ。
★
定着を図るのも社長の務めだ。退職の原因は、多くが上司や同僚と
の人間関係だ。退職防止には、社長と幹部、幹部と社員、社員同士
がコミュニケーションをとり、人間関係を円滑にすることだ。
コミュニケーションは「質より量」だ。回数を増やすには、飲食の
機会を会社主導で用意する。飲食で心が緩み、本音で話ができる。
その回数を重ねることで人間関係が良好になるのだ。
もちろん、人には必ず「合う」「合わない」という相性がある。そ
こで離職を防ぐためにも、2、3年に一度不定期に異動をするよう
にする。異動には2つのメリットがある。
まず、異動した人が成長する。色々な現場を体験することで新しい
ことを覚え成長する。もう1つが、現場の雰囲気が改善される。定
期的に異動があれば、合わない上司の下でも我慢できるものだ。
異動は、管理職が中心だ。特に、上司の場合は、現場の複数の人と
相性が合わないようなら、早めに異動させることだ。その方が、現
場もうまくいくはずだ。
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