マル激!メールマガジン 2021年2月10日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム
https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1035回)
日本がまともなコロナ対策ができないわけ
ゲスト:郷原信郎氏(弁護士)
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入院を拒否した感染症の感染者や営業の時短・停止要請に従わなかった飲食店などに対する罰則の導入が謳われた新型コロナ対策特措法、感染症法などの改正案が2月3日、成立した。今月13日から施行されるという。
しかし、この法改正には数々の疑問がある。感染症法の入院措置に罰則を設けることで強制力を持たせることは、ハンセン病や結核、HIV感染者に対する科学的根拠なき差別や強制隔離、ひいては断種手術にまで至った最悪な歴史の教訓を受けて1998年に制定された感染症法の基本的な法の理念に反すること。しかも、コロナ対策としては、そもそも今回の法改正の目玉となっている罰則の対象となる入院拒否者や時短要請の拒否事業者が、現在の感染拡大の元凶となっているというエビデンス、つまり立法事実が存在しない。
弁護士の郷原信郎氏は、強制入院の権限をうたう感染症法の改正案について、法律の建て付け自体が不自然で「まともな法律の体をなしていない」と酷評する。「実際にはその条文は適用できないだろう。何のための法改正だったのか、その真意を疑う」と郷原氏は語る。
結局のところ、今回の法改正も、そして緊急事態宣言の延長ですら、まったく有効なコロナ対策を打つことができない政府の無能さを隠すための隠れ蓑なのではないかとの疑いが拭えない。実際、今回の法律の改正案が成立する前日の2月2日に菅首相が、緊急事態宣言の1か月間の延長を発表したことは、決して偶然ではない。
医療の逼迫については、日本政府が昨年の緊急事態宣言発令以降、一般病床をコロナ病床やICUに転換する努力を怠ってきたことのつけが回ってきたことに尽きる。しかも、その間、第3波への備えを進めていなければならかったはずの政府は、与党幹部と関係が深い観光業や運輸業を救済する目的で実施されたGo to Travelに、天からの授かりものをいたずらに消費してしまった。
これはひとえに日本政府がコロナ対策に失敗していることを意味している。日本はコンタクトトレーシングを行う上で最強の武器となるはずのスマホアプリの開発さえまともにできていなかったことが明らかになっているし、ワクチン開発でも他国の後塵を拝している。
結局、医療体制が逼迫しているとの理由から緊急事態宣言という形で国民がさまざまな行動変容を強いられ、特に飲食店などは営業短縮による経済的な打撃を甘受することによって、政府の不作為のつけを払わされている。また、Go to Travelの是非や、今回の緊急事態宣言延長を受け、飲食店などに対する国の助成を強化する必要性が叫ばれているが、それはいずれも政府の無能さが引き起こした大きな損害を、国民の税金を使って埋め合わせているに過ぎない。
日本では社会の様々な面が機能不全に陥っていると言われて久しい。東日本大震災とそれに伴う原発事故に際しても、危機対応という意味においても、事後の安全対策や被害者救済という意味においても、日本政府はことごとくやることなすことが遅すぎたり、足らなかったり、見当違いだったりといったことが繰り返された。そのたびに泣かされるのは国民であり、最終的にそのつけを払うのも国民だ。その意味では、最初からまともなコロナ対策を期待する方がおかしいのかもしれない。
しかし、そのような政府を選び、それを許容しているのも、われわれ国民なのだ。
今週は鳴り物入りで与野党合意(自、公、立憲、維新などが賛成)の末成立した改正法が「まともな法の体をなしていない」と酷評する弁護士の郷原氏と、なぜ日本がコロナで有効な手が打てないのか、なぜこんな日本になったのかなどについて、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。
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今週の論点
・法律として理屈に合わない感染症法の改正
・言い訳づくりとしか思えない法改正と、野党の不甲斐なさ
・既得権益を何より優先する「日本的ネオリベ」というペテン
・一度「ガラガラポン」をするしかない
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■法律として理屈に合わない感染症法の改正
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