メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

第118号(2021年2月22日) ロシア憲法改正と北方領土交渉の「終わり」

小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略
存在感を増す「軍事大国ロシア」を軍事アナリスト小泉悠とともに読み解くメールマガジンをお届けします。 【目次】 ●インサイト 「割譲」と「画定」 ロシア憲法改正と北方領土交渉 ●今週のニュース ロシアのパキスタン接近とインドの出方 ●NEW CLIPS ロシアの新型戦闘無人機 ほか ●NEW BOOKS ロシア憲法改正で北方領土交渉は終わり、との評価 ●編集後記 研究室がハイブリッド攻撃を受けた話 =============================================== 【インサイト】「割譲」と「画定」 ロシア憲法改正と北方領土交渉  今年2月10日、ロシアのプーチン大統領はメディア関係者と会合し、この中で日本との北方領土問題について「日本との関係は発展させていくつもりだが、ロシアの基本法に違反することはしたくない」旨述べました(以下の動画の30分58秒あたりから)。 <https://www.youtube.com/watch?v=uB8Q62Ws__U>  ここでプーチン大統領が「基本法」と述べているのは、昨年7月に改正されたロシア憲法のことです。この改正ロシア憲法では、国家の領域について定めた第67条に第2.1項が新設され、領土の「割譲(отчуждение)」を禁止するとしています。プーチン大統領は日本との関係においてこれに反することは「したくない」と言っているわけですから、日本が期待する領土交渉について前向きなメッセージでないことはたしかでしょう。  また、メドヴェージェフ国家安全保障会議副議長(元大統領・首相)も、2月1日に、憲法改正を理由として「主権を取引することはできず、それについていかなる決定を下すこともできない」とマスコミのインタビューに対して発言し、日本メディアも大きく取り上げました(https://ria.ru/20210201/kurily-1595447460.html)。  2月10日にはロシアのガルージン駐日大使からも同様の発言があったと報じられています(https://digital.asahi.com/articles/ASP2H3CJ9P2GUHBI01C.html)。  ロシアの要人たちが相次いで憲法改正を理由に北方領土問題に厳しい発言を繰り出してきた背景には、本メルマガ第116号(https://note.com/cccp1917/n/n8beac943c12e?magazine_key=m59addce99619)で取り上げた、菅首相による施政方針演説の微妙な変化などがあるものと思われますが、北方領土交渉の道が絶たれたわけではない、という意見も日本には根強くあります。  改正されたロシア憲法には、「国境の画定は除く」と書いてあるではないかというのがその根拠です。  では、実際に改正ロシア憲法第67条第2.1項には何と書いてあるのか、見てみましょう。 「ロシア連邦は、その主権及び領土的一体性を守る。ロシアの連邦の領域の一部を割譲する行為(ロシア連邦と他国との国境線のделимитация, демаркация, редемаркацияは除く)や、これを呼びかける行為は認められない」  ここで原語のままとしたделимитация, демаркация, редемаркацияの3つが、日本で言われている「画定」です。では、これら3つはどう違うのか。国営測量会社「ロスカルトグラフィヤ」の説明では、こうです(https://www.roscartography.ru/demarkacziya-i-delimitacziya-granicz-rossijskoj-federaczii/)。

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • 小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略
  • ロシアは今、世界情勢の中で台風の目になりつつあります。 ウクライナやシリアへの軍事介入、米国大統領選への干渉、英国での化学兵器攻撃など、ロシアのことをニュースで目にしない日はないと言ってもよくなりました。 そのロシアが何を考えているのか、世界をどうしようとしているのかについて、軍事と安全保障を切り口に考えていくメルマガです。 読者からの質問コーナーに加えて毎週のロシア軍事情勢ニュースも配信します。
  • 1,100円 / 月(税込)
  • 毎週 月曜日(祝祭日・年末年始を除く)