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【死んでも書きたい話】拘束は拘束する側の精神をも破壊する

安田純平の死んでも書きたい話
軍によるクーデターへの抗議デモが続くミャンマーで、取材していた日本人ジャーナリストの北角裕樹さんが一時拘束され、即日解放されました。元日経新聞記者で、現在はミャンマーのヤンゴン在住です。 https://digital.asahi.com/articles/ASP2V5RCPP2VUHBI02B.html 北角さんとは2010年に都内であった比較的若手記者の集まりで何度か会ったことがあります。「捕まる奴はだいたい友だち」という歌詞の歌が昔あったようななかったような気がしますが、当時は北角さんはまだ日経の記者で、何か新しいことをやろうという意欲にあふれていました。 その後、教育関係の仕事に移っていたことを報道で知りましたが、さらにミャンマーに移住していたとは知りませんでした。編集プロダクションを立ち上げ、現地人の記者育成などにも携わるなどしているそうで、驚きました。なんともうらやましい限りです。 デモ隊の目の前での拘束は撮影もされて大きなニュースになりました。デモ参加者の拘束が相次いだ中での初めての外国人記者の拘束ということですが、軍隊に丸腰の市民が対抗するのは危険で非常に難しいのはシリアなどを見ていてもよく分かることで、国際社会による支援と圧力を市民は期待しています。そうしたことがあって即座にSNSなどで拡散されました。 軍や警察による拘束は日常的に起こりますが、どういった扱いをされるかは国とそのときの状況によります。北角さんは拘束中もLINEで友人に連絡を取っていたようですし、カメラを持って解放されましたから、手荒なこともされずに無罪放免ということでしょう。 前掲の記事では「日本政府関係者によると、治安当局が多数の人を拘束した際に、一緒に連行された可能性があるという」となっています。おそらくそんなところでしょう。 北角さんは「警察は私がジャーナリストだと気づかなかったと説明した。ただ、『プレス』と書いたステッカーをヘルメットに貼っていたので、説明が正しいとは思えない」とメディアに語っています。 外国メディアに報道させないための見せしめの拘束ということもありえますが、拘束の瞬間まで撮影されてSNSで拡散されているので全く逆の効果になっています。スマホで誰でも撮影できる時代であり、軍がその程度のことを予測できないとも思えません。 「ジャーナリストだと気づかなかった」と言ったそうですが、扱われ方を見るとむしろ「外国人だと気づかなかった」ということではないかという気がします。 その後も滞在を続けて発信していますので、日本政府による救出ということはまずないです。外国政府による介入は軍は望まないでしょうから、日本側に連絡をすることもなく即日解放ということだと思います。外国でよく起こる日常的な一時拘束で、目撃されたことで大きく報道されたという違いがあるだけです。騒ぎになると取材継続に支障が出ることが多いですが、そのまま滞在を継続できているようで、なによりです。 ミャンマーでは07年に、反政府デモを取材中の長井健司さんが軍による至近距離からの銃撃で殺害されています。私は東南アジアには詳しくありませんが、他の地域よりは日本人は顔が比較的似ているので、現地人と同様の弾圧の対象になる危険性もあります。いかに現地人が厳しい状況にあるかということをより近い立場で取材できているということですが、それだけ危険も伴います。 逆にシリアのように外国人が狙われる現場もありますので、どちらがより危険という問題ではなく、その現場の状況に合わせた対応が必要ということです。 今回の件でひとつ言えるのは、現時点においては日本人記者が軍に拘束されても酷い扱いはされず、日本政府の関与もなく解放されて取材を継続できるということです。状況は変わるものですが、これもひとつの判断材料です。04年にイラクで拘束されて解放された私にある同業者が言った感想は「捕まっても平気なんだ。行けるってことだね」でした。 日本人記者たちに果敢な取材を今後を期待したいところです。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 今回は2016年1月20日から3月3日までの日記です。 よろしくお願いいたします。 -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------

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  • ジャーナリスト安田純平が現場で見たり聞いたりした話を書いていきます。まずは、シリアで人質にされていた3年4カ月間やその後のことを、獄中でしたためた日記などをもとに綴っていきます。
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