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【Vol.371】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「コロナとワクチン、絶望的な「グタグタ」感の正体は?」  政治や社会が「グタグタ」だとよく言われます。とにかく、問題がどこに あるのか良く分からない、政治がまともな判断をしているとはとても思えな い、何か決定や判断がされても、その根拠が示されないし、そもそもその判 断が信用できない・・・そんな感じです。  もっと直感的に言えば、どうも変だなと思っていたら、やっぱり変な判断 が降りてきて、結果もダメダメだった、ということが何度も繰り返されると いう感じでしょうか。  その最たるものが、コロナに関する政策の迷走です。  パンデミック発生から既に丸1年が経過する中で、日本のコロナ政策は迷 走している、これは間違いないと思います。ですから政治不信が拡大してい るわけですが、野党に統治スキルがないので代替の選択肢もない中では、閉 塞感が増すばかりです。  では、一つしかない与党にこのまま任せていいのかというと、例えば安倍 政権にしても、菅政権にしてもここまで「大事なことは言わない」というこ とが続くと、さすがに世論としても「このままこの人たちと心中して大丈夫 なのか?」という不安を隠せなくなってきます。しかしながら受け皿はない、 という不信と閉塞のスパイラルが益々グルグルになっているわけです。  このままでは、ただでさえ活力が低下しており、それがコロナ禍で疲弊し ている日本の場合は、更に社会のエネルギーが乏しくなって行って、もう1 段、あるいは2段貧しくダメな社会に陥ってしまうのではと真剣に懸念され るように思うのです。  何が問題なのでしょうか?  要するに1点だと思うのです。それは「次善の策となった複雑な事情」を、 政治の側でちゃんと説明するスキル、そしてメディアや世論の側で受け止め るスキルをちゃんと身に付けるということです。  まず検査と病床の問題があります。確かに疑わしい人、必要な人にはPC R検査が100%用意されるべきです。また、パンデミックが事実である以 上は、コロナ病床は必要に応じて増床すべきです。ですが、こうしたことは 実現していません。2月くらいからチラホラとメディアでも言われ始めてい ますが、病院のマネジメント、医師会の現状維持政策、保健所のキャパなど の問題で、「できない事情」があるということも分かってきました。  要するに日本の場合は、医師や看護師、臨床検査技師といった「終身雇用 で国家資格の必要な専門職」は、いくらパンデミックだからといって、現行 の制度では柔軟に増やしたり元に戻したりできないのです。  だったら、そう説明すればいいのに、医師会などは一方的に感染拡大を抑 制しないと自分たちが困るとの一点張りですし、PCRについて増数ができ ない時期には、厚労省は「やります」と言いながら「やらない」といういい 加減な態度を取っていました。  とにかく「終始雇用専門職の臨時増員はできません」ということを正直に 言えば良いのですが、医師会も厚労省も言わないわけです。「正直に言った ら臨時増員が可能な制度変更がされて、それが既存有資格者の既得権益崩壊 につながる」とでも思っているのかもしれませんが、そうした批判が出たら それは堂々と受けて立てばいいのであって、いつまでもいい加減な態度を改 めないから「グダグダ」という感じになってしまうのです。  ワクチンの確保遅れの問題も良く分かりません。勿論、日本の場合は「下 手をすると噴出してしまうアンチワクチン感情のマグマ」という問題と、 「絶望的なまでの治験への無理解」という問題があって、厚労省としては半 世紀に渡って、この問題と悲惨なまでの「負け戦」をやってきた歴史がある わけです。  ですから、個人的には同情を禁じえない点もあるのですが、それでも、こ こまで手配が遅れるという中には、色々なファクターが積み重なった結果 「次善の策」としてどうしようもない現実として「こうなった」のでしょう。  そのファクターをしっかり公開しないから「グダグダ」という印象が広が るわけです。(以下略)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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