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【死んでも書きたい話】ついに動画を撮影される

安田純平の死んでも書きたい話
今回は日記の2016年2月29日から同3月15日までです。 一部前回とかぶりますが、前回は一部抜粋したコピーを掲載していたことが分かりましたので、改めてオリジナルを掲載します。 よろしくお願いいたします。 【2016年2月29日(月曜日)】=拘束244日目 今年は五輪のはずなのでうるう年のはず。もう日付もわからない。朝、布団で筋トレしているとデブのおっさん。 「たくさん動いているが何か問題か」 トイレきつすぎるとできないので朝の礼拝を呼びかけるアザーン後に暗いうちから始めたが見られてたか。これ言いがかりつけられるときつい。 「トイレ」と言うとデブのおっさんの案内で行ける。暗くてもトイレいいなら夜に行かせろ。 15:00過ぎの筋トレはかなり慎重にやる。 テレビ没収は何も考えていないとは思うが、オレから隠さないといけないニュースといえばオレに関するもので殺害をにおわすものくらいだろう。帰れればニュースを遡って見れるのだし、今隠す必要あるのはオレが死を知って暴れるのを防ぐことくらい。次の動きは金曜と見ているが、本当に生死の分かれ目。 昼のアザーン後に自称イエメン人のアブドゥル。鼻声。茶2杯、ツナ、トマト。アブドゥルだとサービスがいいからいい。夕方は電気がついていてだいぶして自称シリア人で元司法書士のジャシム。グリルチキン少量、ピクルス。ケチャップつきなのはいい。パサパサで味がないので。 殺す気ならもっとメシがそまつかと思うが、奴らの残りものなので何とも言えない。ノートを持ち帰れるか分からんので、今のうちに読み直して少しでも覚えておくべきかもとも思いつつ、これまでを思い出すと辛いことになるだけなので、今やると解放されたら即帰りたくなりそう。それで正解なのかもだが。今は取材取材して帰ることに集中したい。 【2016年3月1 日(火曜日)】=拘束245日目 22:00にトイレ行ったのに未明には小便近くなる。朝に奴らを呼んでも無視で、11:00ころアブドゥル。今までで最もきつかった。小便もうんこもかなり出る。うんこのせいで小便きつかったのか。もう朝は完全に無視のようだ。 玉子焼きとトマト。 夕方は電気ついてすぐジャシム。トマト玉子炒め。 「How are you?」と言うので「うーん」という顔していると、「Not good. I know」 と言う。テレビ没収のこと言っているのか。今さらテレビ没収で「殺す気か」とオレは考えているんだが。暇つぶしになるヒマワリの種もないらしい。前は何か頼むとすぐ買ってきたりしたんだが。金を取れないと分かった途端これか。 夜7:00過ぎに外から戻る奴がいたりするが、交代で外出しているのか?オレの取材受け入れをするはずだった武装組織アハラル・シャムが、解放されたあとに改めて取材OKした場合、昨年10月に救助しようとしてくれた上に受け入れてくれるのに、取材に入らないとなると断ることになる。受け入れを聞く以上は絶対に入らないと。仏教徒でもいいのかだけは確認して、OKならやるしかない。 電気消えてからアブドゥル来て、「朝トイレなしだ」という。 「10:00以降とか?」 「10:00もなし。昼までなし」 「ハァ?」とオレ。 トイレから戻ると「なんでヒゲ切らない」とアブドゥル。 「このままがいいから」 「殴るぞ」

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  • ジャーナリスト安田純平が現場で見たり聞いたりした話を書いていきます。まずは、シリアで人質にされていた3年4カ月間やその後のことを、獄中でしたためた日記などをもとに綴っていきます。
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