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第124号(2021年4月5日) ロシアの対宇宙作戦能力、新型ICBM ほか

小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略
存在感を増す「軍事大国ロシア」を軍事アナリスト小泉悠とともに読み解くメールマガジンをお届けします。 【目次】 ●レビュー ロシアの対宇宙作戦能力に関する報告書 ●今週のニュース ロシア、新型ICBM開発へ? ●NEW CLIPS Il-112V小型輸送機が二度目の「初飛行」 ●NEW BOOKS 北極における中露関係 ほか ●編集後記 土地の記憶 =============================================== 【レビュー】ロシアの対宇宙作戦能力に関する報告書  今回はレビューです。  宇宙専門シンクタンクSecure World Foundationが今月公表した GLOBAL COUNTERSPACE CAPABILITIES: AN OPEN SOURCE ASSESSMENT(https://swfound.org/media/207141/swf_global_counterspace_capabilities_2021.pdf)から、ロシアの対宇宙作戦能力についての主なところを見ていきましょう。 ●概観 ・ロシアはソ連崩壊後に失われた対宇宙作戦能力を復活させようとしている。ここにはソ連時代の計画を復活させたものもあれば、新たに開発されつつあるものも含まれる。 ・その動機は中国と同様、地域的なパワーを増強し、米国がロシアの行動の自由に干渉する能力を制限することにある。 ・中国との相違点は非物理的な能力を追求している点にあり、電子戦による衛星妨害を在来型の軍事作戦と緊密に統合していると見られる。 ●軌道共有(co-orbital)型 ・ソ連は冷戦期に低軌道での衛星破壊を意図したIS及びIS-Mシステムを開発して実用化した。これらは1993年に退役したが、これを支える宇宙状況監視(SSA)、ターゲティング、管制システムは維持された。 ・冷戦末期にはUR-100N UTTKhを発射母機とするナリャード-Vシステムを開発した。これは低軌道だけでなく高度4万kmまでを攻撃可能なサイロ発射型システムであった。 ・ナリャード-Vの開発はソ連崩壊後に停止されたが、発射システムはロコット打ち上げシステムとして実用化された。 ・ロシアは2013年から宇宙空間での衛星ランデブー実験を開始した。これらはニヴェリル計画の下で2011年から実施されている新たな対宇宙作戦能力開発計画の一環であり、14F150と14F153の二系統の衛星監視衛星の開発が進められている。 ・これと並行してブレヴェストニクと呼ばれる計画が存在し、ニトロゲン発生装置によって敵の攻撃衛星からの防御能力を備える。ブレヴェストニク攻撃手段としては、爆発性の弾頭と電荷を帯びた繊維の散布の可能性が指摘されている。 ・ブレヴェストニクの打ち上げ手段としては地上発射型ロケットだけでなく、MiG-31戦闘機から発射される空中発射式ロケットが用いられる可能性がある。 ・2014年にはヌミズマート計画により、超広帯域(UWB)レーダーによる電波妨害能力を備える可能性がある。

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  • ロシアは今、世界情勢の中で台風の目になりつつあります。 ウクライナやシリアへの軍事介入、米国大統領選への干渉、英国での化学兵器攻撃など、ロシアのことをニュースで目にしない日はないと言ってもよくなりました。 そのロシアが何を考えているのか、世界をどうしようとしているのかについて、軍事と安全保障を切り口に考えていくメルマガです。 読者からの質問コーナーに加えて毎週のロシア軍事情勢ニュースも配信します。
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