存在感を増す「軍事大国ロシア」を軍事アナリスト小泉悠とともに読み解くメールマガジンをお届けします。
【目次】
●インサイト ロシアはウクライナとの戦端を開くか
●今週のニュース 戦略ロケット軍のICBMと東部軍管区の戦車部隊近代化の状況
●NEW CLIPS ロシア軍防空部隊記念日とナゴルノ・カラバフへの人道支援
●NEW BOOKS 情報戦研究所が見たロシアの「カフカス2020」演習 ほか
●編集後記 今年はやりますよ
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【インサイト】ロシアはウクライナとの戦端を開くか
●ウクライナで再び高まる緊張
今年春以降、ロシアとウクライナ国境で両国の部隊が増強され、緊張が高まっています。
軍用装備を満載した列車がロシア側、ウクライナ側双方で目撃されており、SNS上にもその様子が多数SNSにアップされています。
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https://www.youtube.com/watch?v=7faHO-jrV1U >
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https://www.youtube.com/watch?v=benySuy5ypk >
3月30日、ウクライナ軍のルスラン・ホムチャク総司令官が述べたところによると、ロシアはウクライナ国境のブリャンスク、ヴォロネジ、ロストフ及びロシアの占領下にあるクリミアに28個大隊戦術グループを配備しているとされます。
BTGというのは2009年以来のロシア軍改革で導入された新たな戦闘単位であり、従来の大隊に予め上級部隊直轄の砲兵や戦車を分遣して増強したもの。西側でいう大隊戦闘団(BCT)に相当し、標準的なロシア陸軍の自動車化歩兵旅団や自動車化歩兵連隊は2個BTG(契約軍人で構成される高練度部隊)と1個大隊(徴兵を主とする低練度部隊)を基幹とすることになっています。
したがって、28個BTGというのは14個旅団に相当する規模ですから、かなりの兵力がウクライナ国境に投入されていることが見て取れるでしょう。ホムチャク総司令官はまた、さらに25個BTGの追加配備が予期されると述べています。
2019年3月にショイグ国防相が述べたところでは、ロシア軍には136個BTG(陸軍、空挺部隊、海軍歩兵部隊合計)が編成されているとのことだったので、ホムチャクの発言を信じれば全体の2割、追加配備がなされれば約4割がウクライナ国境に配備されるということになります。
一方、ロシア側は、兵力の増強を進めているのはウクライナの方であると非難しており、双方の泥試合という感じもしますが、2015年の第二次ミンスク合意以降、最悪の軍事的緊張が高まりつつあることは事実と言ってよいでしょう。
こうした中で、ドンバスでは戦闘も激化しています。昨年7月27日、ウクライナ政府とドンバスの親露派武装勢力は停戦合意を結びましたが、今年に入ってから7000件以上の停戦合意が発生し、57名が負傷、20名が戦死しました。特に3月26日には1日でウクライナ軍人4人が死亡しています。
●何故今なのか
そこで今回は、今年1月以降の出来事を振り返りながら、何故今になって緊張が高まっているのかを考えてみましょう。以下、注目すべき動きを以下にまとめてみました。
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