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第126号(2021年4月19日) ウクライナ企業を狙う中国思惑 ロシア軍のロボット化部隊 ほか

小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略
存在感を増す「軍事大国ロシア」を軍事アナリスト小泉悠とともに読み解くメールマガジンをお届けします。 【目次】 ●インサイト 中国によるウクライナのエンジン工場買収阻止の背景 狙いは巡航ミサイル用エンジン? ●今週のニュース ウクライナ周辺でのロシア軍増強、陸軍にロボット化部隊を設置 ほか ●NEW CLIPS ウクライナ周辺に展開するロシア軍 ●NEW BOOKS ドンバス情勢に関するロシア有識者の見方 ●編集後記 コロナ危機に軍事オタクができること =============================================== 【インサイト】中国によるウクライナのエンジン工場買収阻止の背景 狙いは巡航ミサイル用エンジン?  すでに日本でも報じられているように(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021032500784&g=int)、ウクライナ政府は同国のエンジン工場「モトール・シーチ」が中国企業に買収されるのを阻止するため、国有化することを決定しました。  同社はソ連時代から軍用ジェットエンジンを製造してきた老舗メーカーですが、中国はなぜ同社に食指を伸ばすのでしょうか。今回は『軍事研究』誌でも健筆を奮っている軍事ライターの木村和尊さんにご寄稿をいただき、その背景について考えていきたいと思います。 「旧ソ連の軍事技術を狙う中国 ウクライナとの防衛協力の促進・強化を」 木村和尊(軍事ライター) ●中国への軍事技術流出阻止に動いたウクライナ  2020年3月11日、ウクライナ国家安全保障国防会議(NSDC)は同国の大手エンジン製造企業「モトール・シーチ」社を再国有化する決定を採択した。  同社に関しては中国企業「北京天驕航空産業投資(スカイライゾン)」が2019年11月の段階で株式の50%以上を獲得しており、ウクライナ政府が中国企業によるモトール・シーチ買収を阻止した格好だ。同20日、キーウ(キエフ)市シェウチェンキウシキー地区裁判所は同社の資産100%を凍結。更に同23日、ウクライナのゼレンスキー大統領はNSDCの決定を実行に移す為の大統領令に署名し、翌日発効した。  モトール・シーチは1907年に創業され、航空機用エンジン及び発電所用のガスタービンエンジンの製造に携わってきた。ソ連時代には、ミルやカモフといったソ連のヘリコプター設計局や、輸送機で有名なアントノフ設計局向けのエンジン製造を担当していた。「世界最大の飛行機」として知られるAn-225「ムリーヤ」のエンジンを製造したのもモトール・シーチである。ソ連崩壊後、モトール・シーチは民営化され、ロシアを主な取引先として経営を続けていたが、2014年のウクライナ・クリミア危機を契機に対露関係は断絶、同社は経営難に陥った。

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  • ロシアは今、世界情勢の中で台風の目になりつつあります。 ウクライナやシリアへの軍事介入、米国大統領選への干渉、英国での化学兵器攻撃など、ロシアのことをニュースで目にしない日はないと言ってもよくなりました。 そのロシアが何を考えているのか、世界をどうしようとしているのかについて、軍事と安全保障を切り口に考えていくメルマガです。 読者からの質問コーナーに加えて毎週のロシア軍事情勢ニュースも配信します。
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