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【Vol.374】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「菅=バイデンの「対面首脳会談」をどう評価するか?」 とりあえず、私の観点からは、次のように総括できると考えています。 a)対中国については、徹底的な現状維持宣言であり、その意味では冒険主 義や挑発色は皆無であり、これを菅総理が呑んだこと、バイデンが呑んだこ とについては政治的な成果としていいのではないかと思います。 b)アジア系へのヘイトクライム問題については、私は、Newsweekで 「首脳会談で取り上げよ」という提言をした、 https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2021/03/post-1223.php わけです。これを官邸が参考にしたのかは分かりませんが、とにかく、従来 の政権とは一味違うという印象を持ちました。これは良かったと思います。 何よりも、中国などへの日米からのメッセージとして評価できます。 c)技術協力については、とにかく「日本は持ち出し」で終わることを危惧 しています。 d)もう一つ気になるのは軍拡を約束したことです。究極の公共工事ですか ら、財界は歓迎するかもしれませんが、やればやるほど技術はアメリカに流 れ、中国との競争は激化して、最後には財政が苦しくなるのは日本側となり ます。追求すればするほど不利なわけですから、中長期の国益を考えた自制 を強く求めたいと思います。 e)ワクチン供給に関しては、J&Jが血栓問題で接種停止になっており、 余剰が出ない危険を感じていましたが、ファイザー供給の道が開けたようで す。この動きですが、高齢者への接種がヤマを越えた後で、米国内での接種 が供給過剰になりつつあり、そのために日本へ回すことができそうです。つ まり、トランプ派などが嫌がって接種を受けない分が回るという気配があり わけで、仮にそうなれば何とも妙な展開になります。 f)エネルギー政策に関しては、小型原子炉、水素、トリチウム水に関して も協議されたと思いますが、詳細は薮の中で、これは大変に困ります。議論 された内容の公開を求めたいと思います。 g)双方が、厳重にマスクをしての会談ということですが、バイデン大統領 と、菅総理はどちらもファイザーを2回接種しています。ということは、接 種完了者同士ということですから、CDC(アメリカ疾病センター)の基準 によれば、会食はOKのはずです。にもかかわらず、あのような厳戒態勢と なったのは、双方が高齢だったので警戒した、国境を越えた場合のルールが ある、お互いの世論向けに炎上しないようにマスクした、などの理由がある と思います。但し、日本の代表団に「非接種者がいた」ので厳戒態勢になっ たのなら、日本側が間抜けとしか言えませんが、日本の代表団が全員接種し ていたのであれば、少しだけですが引っ掛かりを感じます。  詳しい分析はまた改めてお届けしたいと思います。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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