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週刊 Life is Beautiful 2021年4月27日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 5Gネットワーク 5Gのサービスについて、このメルマガでも何度か触れて来ましたが、私自身の頭の中を整理する上でも、一度、まとめて解説しておきます。 5GのGはGeneration(世代)の略です。携帯電話用の無線通信網のプロトコル(規約)は、ITU(国際電気通信連合)という組織が決めており、その5世代目にあたるものです。 1G(第一世代)はアナログ方式で、音声通話のみでしたが、2Gからデータ通信が導入され、世代ごとに通信速度が向上し、可能なサービスの種類も増えています。 4Gから5Gへの主な違いは、大容量、低遅延、多数同時接続の三つです。通信スピードは、最大1Gbps が最大10Gbpsに、遅延は10ms が1ms に、同時接続数は1平行キロメートルあたり10万が100万に増えています。 これらの数字だけ見ると、大きな進歩ですが、現時点で4G端末を5G端末に買い替えたとしても、ほとんど変化を実感することは出来ません。それには、以下のような理由があります。 まず第一に、端末を5G端末に切り替えたとしても、その端末を使う場所に5G向けの基地局(通信事業者が端末向けに電波を飛ばすために設置する設備)がなければ、なんのメリットを受けることが出来ないのです。基地局の設置には、設置に必要な場所が必要だし、高価な装置も必要なため、通信事業者は、いきなり全国に5Gの基地局を設置するような無謀なことはせず、人口密度の高い都市部から徐々に基地局を設置して行くのです。 日本で最初に5Gサービスを開始したNTTドコモは、5Gエリアを公開していますが、それを見ると、とりあえずドコモショップなどをミニ基地局として、ごく限定的なサービスしか提供していないことが分かります。 「5G基地局投資、2023年度には1000億円の大台を突破へ」という記事によると、日本の通信事業者はこれから数年間に渡って、数千億円を投じて5Gの基地局を増やす計画を持っていますが(下のグラフ)、それはつまり、さまざまな場所で5Gの恩恵を受けることが出来るのは数年後、ということを意味します。 また、たとえ5Gの基地局が近くにあったとしても、実際に 10Gbps のスピードで何かをダウンロードすることは出来るような設計にはなっていません。ビジネスとして5Gサービスを提供する以上、通信事業者は、端末一つあたりのスピードに上限を設けるし、基地局に接続している端末の数に応じて、スピードを調整する必要があります。 通信事業者は、まずは、5Gによるメリットが出やすい、人がたくさん集まる野球場やサッカースタジアムなどに向けて基地局を優先して設置するため、消費者は、まずは、そんな場所に行った時にだけ、5G端末を持っていた方がネット繋がりやすい、という状況を経験することになります。一部の消費者にとっては、それだけで5G端末に切り替える理由になるでしょう。 5Gの方が基地局一つあたりが送受信出来る容量が増えるため、データ通信量(いわゆる「ギガ」)の上限を増やすことも理論的には可能ですが、5Gの基地局が十分にない段階では、「5Gの基地局に接続出来た時だけ、上限が増える」ような、消費者には理解しにくいサービスになってしまう可能性があるので注意が必要です。 低遅延の方は、無線通信の遅延をいくら減らしたところで、インターネット側の遅延はゼロにならない(数十ms)ので、ほとんどのケースで、消費者がメリットを実感出来ることはありません。直接的なメリットを感じられるのは、遅延の大きさがユーザー体験に大きな影響を与える、Google Studia や Microsoft xClod のようなストリーミング型のゲームに限定されます。 通信事業者は、低遅延により、いままで不可能だったサービスが可能になると宣伝していますが、低遅延のメリットを本格的に生かすためには、インターネットを介さずに、基地局とサーバーを専用回線で繋ぐ必要があり、通常のインターネット・サービス事業者には縁のない話です。 低遅延のメリットが十分に生かせるのは、工場や配送センターなどの特定の場所で、複数のロボットを5Gで専用の基地局に繋ぎ(ローカル5Gと呼びます)、そこに直結したサーバーから全てのロボットをリモートで自動操縦する、ような特殊なケースです。 5Gのプロモーションビデオの中に、自動車を5Gでリモートに自動運転するというデモを見たことがありますが、これを一般道で実現するためには、莫大な数の基地局が必要だし、通信量も莫大になってしまうので、全く現実的ではありません。

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