■「仕事」の習慣
「ライフシフト」という言葉がある。これは、リンダ・グラットン
の世界的名著『LIFE SHIFT』で爆発的に有名になった言葉だ。同書
のサブタイトルには「100年時代の人生戦略」とある。
ライフシフトの意味は「人生の向きや位置を変えて変化を起こす」
ことだ。長寿化により「教育→仕事→引退」の3ステージから、ス
テージの移行を多く経験する「マルチステージ」の人生が到来する。
本書の内容や考え方は、実に説得力と納得感がある。ただし、制度
や環境が違う日本に生きる私たちには実践が難しい面もある。読ん
で危機感を感じても、具合的にどう行動すべきかわからない。
そこで、ここでは普通の共働き会社員が「人生100年時代に何を準
備すべきか」についての試行錯誤を紹介する。誰もが実践できる、
家庭もキャリアも、賢くしたたかに楽しく続けるための人生戦略だ。
★
日本の多くの家庭では、本来親として、夫婦としてやるべき家事や
育児を、もう1人のパートナーに負担させている。これが続くと、
一方はキャリア形成できず、もう一方は家庭内で役割が果たせない。
その結果、不満を感じた側から見限られて離婚したり、子育てがひ
と段落して夫婦2人になったところで、キャリア形成できなかった
ことに不満に持たれる可能性がある。
お互いの人生やリソースにただ乗りしてキャリアを成り立たせても、
健全な夫婦関係は築けない。短期的には乗り切れても、長期で考え
た時、必ずどちらかに不満が残ってしまう。
大事なことは、相互のキャリアを短期目線でなく長期目線で共有す
ることだ。その前提として、家事も育児も仕事もすべてを100点満
点にこなすことは無理だということを2人で認識することだ。
★
夫婦は「共同経営者」だ。夫と妻で「家族会社」を経営している。
そこで長期の経営目標として、相互のキャリア構築のタイミングを
長期事業計画として立てていくことだ。
たとえば「子供が小さいうちは大変だが、年齢的に仕事のアクセル
を緩めたくない」とか「アクセルを踏むのは、子どもが小学生に上
がったタイミングにしたい」など話し合い家族で支え合うのだ。
このように互いのキャリアビジョンを話し合うのだ。短期目線で見
ていると「家事育児をやっているかどうか」「夫ばかり好きな仕事
している」など、今の話にフォーカスしがちになる。
だが、長期的な目線でお互いのキャリアのアクセルの踏みどころを、
夫婦で調整し合い、家族を運営していけば、健全なキャリア形成が
行なえるようになるはずだ。
★
キャリアを形成する上で持っておいたい考え方は「トレードオフ」
思考だ。「トレードオフ」とは「何かを得ようと思ったら、何かを
差し出す」ことだ。
たとえば、物を買おうと思えばお金を、のんびりしたいなら何かを
止めて自分の時間を差し出さねばならない。それなのに、キャリア
やお金を稼ぐことに関しては、すべてを手に入れようとしがちだ。
迷ったら「好きなように仕事に時間をかければ、経験やスキルが身
につくのか」「代わりに差し出しているものは何か」などと考えて
みることだ。
「できないのでなく、今はそういうタイミングだ」とか「トレード
オフで出せないから、得られる結果が少ないのだ」と思えれば、気
持ちを緩めて働き続けられるはずだ。
大事なことは、キャリアのスピード維持ではない。レースから降り
ないこと、諦めないことだ。一時的に差し出せないことも認識して、
キャリア形成をストップさせるのでなく、続けることが重要だ。
この「トレードオフ思考」は、家事育児や仕事すべてにおいて役に
立つ。キャリアと家族など「家族の運営方針」に迷ったら、使える
リソースと差し出すものを比べて考えてみるべきなのだ。
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