第129回 損なわれてはならないもの(1973年)
「損なわれてはならないものはけっして損なわれてはならない。一度損なわれてしまうとそれを取り戻すことはとても困難だ。」
損なわれてはならないものが損なわれてしまった主人公がそれを取り戻すために旅に出るということは村上春樹の小説によくある展開です。
損なわれてはならないものが何なのか具体的にわからないまま彼の小説を読み続けましたが,2009年のエルサレム賞受賞スピーチ「壁と卵」の原稿を読んだとき,初めてはっきりとわかりました。
けっして損なわれてはならないもの,それは自分らしさです。
自分らしさを失うと自分らしく生きることができなくなります。
自分らしくない人生にどんな意味,どんな価値があるのでしょうか?
壁はシステムで,卵は人間です。
システムは人間が社会を形成するために作られたもので,本来は人間を守るためのものですが,時には人間をひどく傷つけます。
システムとは軍隊,政府,学校などです。
2歳の娘は今のところ100%自分らしく生きていて,私には子育ての苦労,悩みはひとつもありません。
そもそも育てているとは思っていません。
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