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伏木悦郎のメルマガ『クルマの心』
第430号2021.5.18配信分
●「知っていること」と「分かっていること」
スピードの話をしよう。当然クルマの価値判断で上位にランクされる性能の
ことである。速度は、走る環境、走らせる人、クルマそのものと、それぞれに
独立したファクターが持つ『限界』から帰納的に推論できる性能指標だ。
何の話? 走行環境の限界は、路面のμ(摩擦抵抗係数)や道路の幅やその
屈曲から導き出される。世田谷の路地裏で100km/hビュンビュンはない道理。
一方、法定速度の最高速度100km/hは一見客観性を帯びるが、それはどこまで
行っても五感という主観領域が関わる話。老若男女やスキル、経験知の掛け合
わせで限界は千差万別。さらにクルマそのもの(ハードウェア/メカニズム)
が加わる。クルマのダイナミクス(実際に走り・曲がり・止まるという運動)
を実現しているのは他ならぬ路面に触れるタイヤだけ。要するにタイヤ性能を
超えては走れない。クルマの走りは広い意味でグリップ限界の内側の話が基本
となる。
要するにこれが”人・道・車=『三重のシステム』”という私の持論の基礎
になる考え方であり、三つの『限界』ファクターからクルマの最適性能を探る
糸口であると同時に『身体機能拡大装置としてのクルマ』という考えで目指す
ゴールにもなっている。
改めて考えるまでもない”あたりまえの話”だ。この事実を知る者は少なく
ない。だが、そのことの意味を分かっているのは多くない。「知っている」と
「分かっている」は別だ。いくら情報として知っていても、正確に理解してい
るとはかぎらない。五感を介して身を以て身体に入力し、五体の筋肉を動かす
出力を何度も繰り返すことで分かったと言える。「身についた」という状態は、
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