■「共感」を土台に考えた組織の仕組み
相手の気持を推し量る力、人を思いやる力、すなわち「共感力」こ
そ人間力だ。会社の原動力も、社員が共感を高め、人生を良い方向
に導いていく力を発揮することなのだ。
実績をあげるために大事なことは、社員の成長だ。優秀な社員を採
用することや、厳しい企業文化を作ることではない。そして成長の
根底には、人を思いやる共感力が必要なのだ。
組織作りにおいても、他人の気持ちに共感するマインドや、社員が
自己成長しやすい仕組みや環境を構築するがきわめて重要な要素だ。
★
営業職は、すべての人から好かれるべきだ。大事なことは、相手に
合わせて自分をチューニングすることだ。もともと相性の良い相手
なら、自然と会話が盛り上がり、同じ方向を向いて話ができる。
だが、相性が良くないお客様にも好かれるには、話題や趣味、興味
などを合わせる必要がある。そのためには、情報を集めたり勉強し
たり、趣味や興味を聞き出して、同じものに興味を持つべきだ。
その結果、信頼を得て大きな契約を預かることができるようになる。
加えて、自分の環境適応力、対人調整力などコミュニケーション力、
共感力の向上が実感できる。それが大きな自信になる。
★
営業は、孤独な個人戦でノウハウを共有しないという風潮があった。
だが、本来仕事は、協力体制があったほうがいい。みんなで頑張っ
たほうが効率が上がるものだ。
スタープレーヤーひとりが頑張っても、寄り添えるお客様は限られ
ている。だが、部下にも数百人のお客様がいる。その部下が成長す
れば、上司は部下が担当する数百人のお客様とも関係が築けるのだ。
つまり、スタープレーヤーが現れるのを待つより、部下全員を育て、
成功させたほうが組織を強く成長させることができるのだ。その結
果、より多くのお客様を支えることができるはずだ。
とはいえ「言う通りにやれ」と命令しても人はついてこない。相手
の立場に立ち、なぜ成果があがらないのか、どうすればうまくいく
か一緒に考える姿勢、部下の気持ちへの「共感」が必須なのだ。
★
保険業界の営業社員は、一匹狼が多い。他の営業社員と協力したり、
情報やノウハウを共有したりすることはない。社内で常に競い合っ
ているものだ。
自分のスキルがそのまま収入にも跳ね返ってくるから、進んで人に
教えようとする人は少ない。その結果、ひと握りのスタープレーヤ
ーがいる一方で、生活さえままならない人が大半という構造なのだ。
だが、会社にとっては、ごく一部の人だけが優秀であるより、全員
の力を底上げしたほうが会社の成長は見込める。大事なことは「高
位平準」だ。社内の平均が高いレベルである状態を目指すのだ。
★
高位平準のために必要なことは「優秀な人を増やす」「情報やノウ
ハウ、スキルを教え合う文化を作る」などだ。この二つは、個別の
目標でなく、互いに関係しあっている。
社内に優秀な人が数人しかいなければ、その人にアドバイスを貰う
のは勇気がいる。相手の時間を奪うことに気が引けて、話しかける
ことすらままならなくなる。
「優秀な人を増やす」ことで、もう一つの「情報やノウハウ、スキ
ルを教え合う文化を作る」も自然に実現できる。ひと握りの優秀な
人に聞かなくても、いつでも気軽に優秀な人に相談できるからだ。
ひと握りの優秀な人材でなく、全体を育てることで、高いレベルが
標準になるのだ。入社したばかりの人や成果があがらない人も上に
引っ張ることができる。これが目指すべき高位平準な環境だ。
優績者も、自分のスキルや知識を人に伝えることで、自らの学びに
なる。「教える」ことで自らのスキルの向上につながる。教える人
が増えれば、社内全体としての営業スキルも上がっていくわけだ。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)