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【Vol.380】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「欧州の中国近海での軍事行動、その原因は?(Q&Aコーナーより)」  中国へのバランス再構築にあたって、どうして欧州が軍事的な示威行動 まで行ったのか、これには次のような要因があると考えられます。  1点目としては、アメリカ、特にバイデン政権のブリンケン国務長官が、 そのように強く根回ししたということが考えられます。中国へのプレッシャ ーになるし、同時に、トランプ時代の同盟軽視の姿勢を180度転換すると いう意思表示なるからです。  2点目としては、ご説のように米軍の欧州における抑止力低下を恐れての 行動ということはあると思います。つまり、全体のパッケージとして、アメ リカはロシアとの特にウクライナ問題で、強くバランス構築を行う、またイ ランやパレスチナの問題で、欧州に火の粉がかからないように注力する、そ の代わりに欧州もアジアでの行動に参加するというセットであるということ です。  3点目としては、いくら「EU=中国、UK=中国」ともに経済的な関係 が強固であっても、ウイグルや香港の問題で宥和的だと思われると、欧州の 指導者は有権者から疑念を持たれるわけです。やはり自由と人権という価値 を掲げての国際的な行動には乗っておいた方が彼らにも得策ということです。  4点目としては、これは日本人としては歓迎できないことですが、この新 型コロナのパンデミックという事態を受けて、アメリカでは、トランプによ る「チャイナ・ウィルス呼ばわり」とか「武漢研究所発生説」などがあり、 またアジア系へのヘイトが横行しているわけです。これと同様の心理や現象 が欧州にも出てきているという問題です。そんな中で、特にコロナの被害の 大きかった英国では、中国近海への空母派遣などを歓迎する心理に繋がって いるということは、深層心理のレベルではあるでしょう。  5点目としては、この6月に英国のコンウォールでのG7サミットが開催 されるという点です。こうした対中国の共同歩調といった姿勢を見せて、バ イデンと欧州は政治的なパフォーマンスを最大化しようという企図はあると 思われます。  ということで、全体としては合理的な範囲の行動と考えています。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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