「火星から金星へ」
アメリカの大統領には様々な指名権があり、その中にNASA(アメリカ航空宇宙局)の長官の指名権もあります。そのため、4年ごとに行なわれる大統領選で、民主党の候補が大統領に選ばれればNASAの長官も民主党系の人物、共和党の候補が大統領に選ばれればNASAの長官も共和党系の人物が指名されるのです。
これまでは、ドナルド・トランプ大統領(当時)の指名で選ばれた元共和党下院議員のジム・ブライデンスタイン氏が、NASAの長官をつとめていました。しかし、昨年11月の大統領選で民主党のジョー・バイデン候補の当選が決まると、ブライデンスタイン氏は「民主党政権下では私は適切でない」として辞任の意向を示し、今年1月20日、バイデン氏の大統領就任に合わせて長官を辞任しました。
その後、次の長官が決まるまで、副長官のスティーブ・ユルチク氏が長官代理をつとめていましたが、3月19日、ようやくバイデン大統領が新長官を指名しました。元宇宙飛行士で民主党の元上院議員、ビル・ネルソン氏です。ネルソン氏は78歳と高齢ですが、スペースシャトルに搭乗して医学実験を行なった実績もあり、政治家としても上下両院で30年に渡り宇宙関連法の制定などに尽力して来た宇宙のスペシャリストです。
4月29日、上院は全会一致でバイデン大統領の指名に同意し、5月3日付でビル・ネルソン氏は晴れてNASAの長官に就任しました。NASAの新長官は、就任から1カ月後を目安にお披露目の講演会をひらき、自身の考えや今後のNASAの方針などをスピーチするのが慣例です。また、この時、何か大きな計画などを発表して話題を提供するのが、集まった記者らに対するサービスにもなっています。
そして、就任からちょうど1カ月目の先週6月2日(日本時間6月3日)、ワシントンのNASA本部ビルで、新長官に就任したビル・ネルソン氏の講演会が行なわれました。ネルソン長官は、これまでのNASAの長い歴史について解説した上で、気候変動に対処するための将来の地球に焦点を当てたミッションや、有人宇宙飛行と月面着陸に特化したアルテミス計画などについて、専門家らと高度な公開議論を行ないました。そして、最後に素晴らしい計画を発表したのです。
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