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週刊 Life is Beautiful 2021年6月15日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん デジタル法定通貨 このメルマガでは過去に、何度か暗号通貨について触れて来ましたが、最近になって、注目すべき一つの大きな動きが出て来たので、今日はそれについて解説します。 暗号通貨の特徴は、ブロックチェーンという技術により可能になった「分散台帳」(複数の人たちがコピーを持ちながらも、整合性が保てる台帳)を活用することにより、どの国にも縛られない「通貨」の交換を可能にした点にあります。 利点としては、どの国にも全くコントロール出来ない通貨の総発行量はあらかじめ決まっている匿名性がある国境をまたいだトランザクションが容易トランザクションコストが安い などがある一方、マネーロンダリングや密売に使われてしまう国境を越えた資産の流れを国が監視・コントロール出来ない投機対象になって、法定通貨との交換レートが乱高下してしまうマイニングに必要な電気代が莫大である価格操作も平然と行われている などの大きな問題点も持っています。 それゆえ、「自分が購入した価格よりも高い価格で将来買う人がいることを期待したギャンブル」でしかないのが暗号通貨の現実です。 そんな中で、暗号通貨の問題点を認識しながらも、その利点と技術に真正面から向き合い、「デジタル法定通貨」の開発を本気で始めた国がいくつかあります。通常の法定通貨と同じく、中央銀行が発行する通貨ですが、紙幣やコインの代わりにデジタルトークンの形で通過を発行する仕組みで、「中央銀行デジタル通貨(CBDC: Central Bank Digital Currency)」とも呼ばれます。 そんな中で、今、もっとも注目されているのが、中国政府が本格的な実験を開始した、「Digital RMB (renminbi)」と呼ばれる、CBDCです。Digital Yuan(デジタル人民元)と呼ぶ人もいます。 CBDCに関する中央銀行による調査・研究は、日本や米国でも行われていますが、どちらも「CBDCを導入する必要があるのか、導入するとすればどうあるべきか」という研究にとどまっています。つまり、「何のためにCBDCを導入するのか」というゴール不在の研究でしかないのです。 それに対して、中国政府は、研究を開始した2014年の段階で、明確なゴールを定めた上で、これらのゴールを同時に満たすものを設計する、というアプローチを取りました。そのゴールとは、ある程度の匿名性を持つ少額であればオフラインでも決済が可能必要に応じて中央政府がお金の流れを把握できる というものです。 この背景には、AlipayとWeChat Payがデジタル決済に関してあまりにも強力な力を持ってしまっていることに対する懸念と、ビットコインを活用したマネーロンダリング(特に、中国国外への資金の流出)や脱税が行われてしまったことに対する強い問題意識があったのです。 つまり、中国政府としては、デジタル決済を Digital RMB によりオープン化して普通の銀行が Alipay や WeChat Payと同じ土俵で戦えるようにし、同時に、中央政府が把握できない暗号通貨によるトランザクションが一般化することを未然に防ぎたいのです。 Digital RMB が、中国国内だけで使われるのであれば、国際社会に対して大きな影響は与えませんが、それを中国企業が海外との取引に使うようになると、話は大きく変わってくるので、その可能性を指摘した上で警告している経済学者がいます。 現在、世界では米ドルが基軸通貨として使われ、ほとんどの取引がドル建てで行われていますが、(Digital 通貨ではない)米ドルで取引をする限りは、Swift という昔からあるシステムを使う必要があるため、時間もかかるしコストもかかります。 「世界の工場」としてさまざまな工業製品の製造を請け負っている中国企業が、米ドルに加えて、Digital RMBでも支払いを受けるようになった場合、Swift コストを避けるために DIgital RMB を使う海外の企業が増えても不思議はありません。 中国は、Digital RMB を使った Payment System と連携して動く Smart Logistics System を構築していると言われ、それが実現してしまうと、そんなものを持たない Swift・米ドルにとっての優位性は圧倒的なものになります。

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