■疲れには3種類ある
情報が飛び交う現代社会に暮らす以上、疲れと無縁できることは不
可能だ。だから、疲れと上手に付き合って心身をコンディショニン
グすることが幸せに生きる秘訣だ。
疲れを溜め込まないコツは、すべての疲れをなくそうとすることで
はない。そもそも、疲れは、痛みや発熱と同様、生体が発するアラ
ームだ。無くすことはできない。大事な事は上手に付き合うことだ。
「疲れ」と一言でいっても、大きく「身体の疲れ」と「脳の疲れ」
に分かれている。さらに「脳の疲れ」は、ネガティブな感情による
「心の疲れ」と「マルチタスクによる疲れ」に分けられる。
これらは、それぞれ疲れる原因が違う。そのため、対処方法も変わ
ってくる。身体の疲れに対しては、酷使した筋肉を休ませてしっか
りと栄養を取り、夜はぐっすりと眠り、翌日に備えるべきだ。
本書で扱うのは、身体以外の2つの疲れだ。すなわち脳から派生す
る心・感情の疲れとマルチタスクによる疲れだ。心の疲れが脳の疲
れに部類されるのは、感情を統制するのが脳だからだ。
ネガティブな感情をたくさん持つと、脳の感情を司る場所が働く。
するとストレスを感じやすくなり、それを抑えようと理性を司る部
分が頑張る。こうして脳がエネルギーロスを起こし、脳が疲れる。
★
「マルチタスクによる疲れ」は、複数の仕事を同時にこなしている
ことで起こる。現代人の日常はマルチタスクだらけだが、人間の脳
はそれが苦手だ。脳が一度に注意を向けられる総量は有限だからだ。
現代社会においてマルチタスクが無くなることはない。だから、脳
は常にスイッチが入った状態で休むことができない。その結果、脳
が疲れてしまうのだ。
「マルチタスク型の疲れ」に該当する人々に共通するのが「悩みが
ないのに疲れている」ことだ。よくわからないが疲れているのだ。
これが現代人に起こる疲れの一つの特徴だ。
だが、これを正しく言い換えると「わからないから疲れている」の
だ。疲れに適切に対処するためには、まずその疲れの本質に気づく
必要があるのだ。
★
従来型の心の疲れはストレスの問題だ。ストレスという心の負荷は、
私たちの心を疲れさせる。だが、ストレスはすべて良いものになる
可能性もある。私たちはストレスがあるから成長できるのだ。
ストレスとどう向き合うかで心の栄養にもなるし、反対に毒にもな
り得るのだ。ただ、良い疲れでも一定量を超えると悪い疲れになっ
てしまう。
つまり、ストレスは食物と同じなのだ。糖分は活動エネルギーとし
て欠かせないが、過剰に摂りすぎると肥満や糖尿病などの生活習慣
病をもたらし毒になる。これと同じだ
★
ストレス負荷のボーダーラインを見極めるのは容易ではない。ある
人にとっては問題なく対処できることも、ある人にとってはとても
負担になる事柄だったりする。
「疲れにくい人」はストレスが発生しても上手に受け流すことがで
きる人だ。あるいは、ストレスを自分の成長の糧に変える力を持っ
ている人だ。
反対に「疲れやすい人」は、小さなミスにも大きなストレスを感じ
てしまう。また、心の中で自分を責めてしまうなど、疲れを蓄積さ
せる考え方の傾向を持っている。
こうした「物事のとらえ方」が、心の在り方を分けるポイントだ。
といっても、無理にポジティブになる必要はない。心は前向きにな
ろうとして、サッと前向きになれるほど単純ではない。
だが、自分の心と向き合う術を知れば、強くしなやかな心を育てら
れる。鋼のような心でなく、揺れても戻ってこれる竹のようにしな
やかな精神を作ることだ。それが、疲れにくい人生の第一歩なのだ。
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