今週のざっくばらん
量子コンピュータ
これまで、何度か量子コンピュータに関してこのメルマガに書こうと考えたことがありましたが、毎回見送って来ました。というのは、私自身がどうしても納得できない部分があるため、そんな疑問を抱えたまま人に説明するのは良くないと考えたからです。
しかし、先週たまたま、Facebookグループの一つで、こんな質問が目に止まりました。
「量子コンピュータも、結局はビット計算が行われて超高速なノイマン型コンピュータということですよね?それともニューロコンピュータ(あまりよく知らんのですが非ノイマン?)とかにもなるのですか?」
質問そのものは、それほど特殊なものではありませんが、そこに書き込まれた回答がどれも役に立たないものなのです。
「量子コンピュータにもいくつか種類があってややこしいですが、ノイマン型と同じって事はないと思います。ノイマン型用の計算量理論が通用しません。」
「ノイマン型とは、アーキテクチャがまるで違います。」
「一つの量子ビットに複数の情報を持たせて同時に計算できるのがみそらしいですね。」
普通のコンピュータと根本的にアーキテクチャが違うこと程度なら知っている人は多いようですが、「どう違うのか」を説明するのが難しいようです。
そこで私は、
「従来型のコンピュータの場合、CPU でも GPU でも資源量に比例した計算能力しか得られません。10コアなら10倍の計算能力。量子コンピュータは、量子もつれを使うため、10量子ビットの資源があれば2^10、つまり1024倍の計算能力を得ることが可能です。」
と答えたのですが、それでも言い足りないことが沢山あるので、一度ここにまとめておくのも悪くないと考えたのです。
まず最初に断っておくと、量子コンピュータのベースになっている量子力学は、少し勉強すれば表面的な話(スーパーポジション、量子もつれ)を理解することは可能ですが、それを「直感的に納得」することはとても難しいのです。そこがボトルネックになって「量子コンピュータのことは理解できない」と感じてしまう人が大半なのです。というのも、スーパーポジションや量子もつれの存在を認めるということは、局所的なパラレルワールド(もしくはパラレル・ユニバース)の存在を認めることに等しいからです。
私も、そんな人の一人でしたが、実際に理論物理学を勉強している人に聞いても、「そこの部分は、『そういうものだ』と考えるしかない」という答えが返って来るので、私もそこに関しては目をつぶって説明することにします。
量子力学の要(かなめ)である「スーパーポジション」とは、電子などの小さな物質が、二つの状態を同時に持っている状態のことを示します。状態として良く使われるのは「スピン」と呼ばれる電子の状態の一種で、通常は、磁場に対して「上向き」と「下向き」の二つの状態があります。
しかし、特定の条件を与えると、電子は「上向き」と「下向き」両方の状態を持つようになり、これがスーパーポジションと呼ばれる状態です。細かく言えば、「上向き80%、下向き20%」と確率分布を伴った状態です。
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