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[高野孟のTHE JOURNAL:Vol.509]世界が注目した「シモーネ・バイルズ途中棄権」事件

高野孟のTHE JOURNAL
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 高野孟のTHE JOURNAL Vol.509 2021.8.2                  ※毎週月曜日発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 《目次》 【1】《INSIDER No.1110》 日本のメディアはあまり書かないが世界が注目した「シ モーネ・バイルズ途中棄権」事件   【2】《CONFAB No.509》 閑中忙話(7月25日~31日) 【3】《FLASH No.421》 「小選挙区制25年」で日本が考えるべき政権交代の形/ 日刊ゲンダイ7月29日付「永田町の裏を読む」から転載 ■■ INSIDER No.1109 2021/07/26 ■■■■■■■■■ 日本のメディアはあまり書かないが世界が注目した「シ モーネ・バイルズ途中棄権」事件 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■  米紙「ニューヨーク・タイムズ」(NYT)7月31日付 のスペンサー・ボカト・リンデルによる論説「五輪は修 復不能なまでに壊れているのか?」はこう書いている。 「日本ではこの五輪は『呪われた』と言われてきて、そ れはコロナ禍の感染大爆発の中で国民の多くが歓迎しな いのに無理やり開催されていることを指しているが、呪 われているのはそれだけでない」と。彼は、五輪の金権 腐敗、商業化、テレビ最優先、選手軽視、女性蔑視など の積年の悪弊を挙げ、とりわけ今回の米体操チームの花 形=シモーネ・バイルズが途中棄権した事件を、その観 点から論じている。 ●心と体がバラバラになる危険な状態  シモーネは、よく知られているように、前回2016年リ オ五輪の体操で4冠を達成し、また2013~19年の間に世 界体操選手権で19個の金を含む計25個のメダルを獲得し ている、史上最高の選手(米国で偉大な選手を称えて言 うGOAT=Greatest of All Time)である。それだけに、 東京五輪でも大いに活躍することが期待されたが、27日 の団体総合決勝で跳馬の演技を終えたところで、突然会 場を去り、以後の試合を棄権した。  大勢のファンから「どうしたんだ?」と心配する声と 共に、「途中放棄とは無責任だ」「弱さの表れ」といっ た非難の言葉も殺到した。それに対し彼女は、29日から 自身のSNSで発信を再開、30日には自分が段違い平行棒 の練習でミスをしている動画を公開し、「ここで見て分 かるように、私は心と体が一致していないのです。皆さ んはこのことが競技場の硬い床の上でどれほど危険であ るか、分かっていない。体の健康は心の健康なのです」 と述べた。さらにファンからの質問に答えて 「twisties」という言葉を使ってこう説明した。  「時々、どうやって体をひねるのか分からなくなり、 上と下の区別がつかなくなって、どこにどう着地するの かも分からなくなる。最もクレイジーな感覚。心身が同 化していないと、体が石のように固くなる。これを解決 するのに2週間以上かかることもある」と。  NYTはこの「トウィスティー」を「一時的な思考停止 〔mental blockだが「心的障害」のほうが適訳か〕のた めに筋肉記憶や空中における空間意識を喪失すること」 と説明し、「とりわけ彼女のように、他の選手がとても 真似したがらない冒険的な技をひっさげて登場した選手 の場合、これがどれほど危険なことであるかについて、 体操界の認識は余りにも薄い」と指摘。そのため彼女 は、5月のテニス全仏オープンで大坂なおみが「精神的 健康」を理由に棄権したのに励まされて、今回の行動に 踏み切ったのである。 ●体罰・暴力・性的虐待が横行した米体操界

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