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【Vol.389】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「日本のテレワーク、どうして生産性が上がらないのか?」  コンピュータ製造販売の中国企業レノボによれば、日本では「テレワーク が生産性を低下させている」というのは顕著なのだそうです。同社が202 0年に世界各国で実施した調査によると、「テレワークでは、オフィス勤務 時よりも生産性が下がる」という回答結果は日本だけが「40%」と突出し ており、他の主要国は全て10%台だったそうです。 https://www.sbbit.jp/article/cont1/65785  アメリカでは、コロナ禍の前からテック系の企業を中心にテレワークは浸 透していました。そんな中で、例えば多くの企業の経営者は「テレワークが 増えすぎて、オフィスに出社するのが減って困る」とボヤいていたのですが、 それは「テレワークは生産性が高すぎる」という問題意識でした。  生産性が高いのはいいことですが、多くの経営者(例えば2013年のヤ フーにおけるメイヤーCEOなど)が指摘していたのは「テレワークでは、 目先のタスクがどんどん効率的に処理されるばかりで、無駄な会話、無駄な 試行錯誤が切り捨てられる」という危機感でした。つまり、在宅だと実務は ブンブン回るのですが、同僚とのボヤキとか将来の夢、荒唐無稽な新発想な どは全く省みられないというのです。  その一方で、日本の場合は全く状況が違うようです。テレワークだと、実 務がブンブン回りすぎるのではなく、反対に実務が回らないのです。  その日本でも、2020年にコロナ禍が始まった際には、多くの企業がテ レワークの試行錯誤を行なっていました。その際には、テレワークに慣れな い上司が問題だというような指摘がされていたのです。ですが、それから1 年を経て、現在は、若手の社員が「テレワークでは実務が回らない」として ボヤいています。  現在は、30代以下のコロナ感染が大問題になっていますが、テックに親 和性のある世代のはずの若手が、どうして「テレワークではダメ」で出社を 強いられているのかというと、上司の目があるから出社するというよりも、 テレワークでは実務が進まないので、出社するというようになっているよう です。  どうしてなのでしょうか?  この問題について、最初に紹介したレノボ社の調査では「(日本の場合) 回答者の46%が「同僚との対面コミュニケーションがなくなったことで、 ストレスや不安を感じる」と答えたそうです。  この「対面コミュニケーション」が必要という感覚ですが、例えばその原 因について日本語の特質を挙げて説明することは可能です。日本語というの は、高コンテキスト言語であり、つまり話者と聴者が事前に情報共有してい る場合には、どんどん言語を省略して非言語の表情やニュアンスなどを混ぜ ながら複雑なコミュニケーションを展開する、そのような特徴があるのは事 実だからです。  だったら、日本語をやめて英語を共通語にするとか、あるいは、同じ日本 語でも、少し古い表現にして例えばメール(スラックなどでもいいです)で 部下から上司に「甲案、機構簡素なりと言えども運用に難アリ。乙案を上策 とす」と意見具申したら、上司は「貴職の見解は先の技術資料と併せて説得 力十分なり、諒とす」などというように、辛口でニュアンスは最小限、事実 とロジック優先でやればいいなどとも思うのですが、どうでしょうか?  実は、そこまで思い詰める必要はないように思います。というのは、問題 の本質は日本語ではないからです。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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