1.はじめに
官邸の権限が強くなった結果、官僚の裁量が減り、仕事の魅力が減ってきている、と最近のニュースではよく言及されています。
本当に官僚は政策立案における裁量がなくなってきているのでしょうか。省庁で働いていた我々からすると、この理解は、当たっているけども、完全に当たっているわけでもない、と感じます。
確かに、2000年前後から行われてきた一連の行政改革等により、首相を中心とする官邸の力は強まりました。
例えば、行政改革により設置された経済財政諮問会議は、小泉政権下において効果的に活用されました。
高齢化による社会保障費が増加をみすえた医療費抑制のための医療制度の改革や、国から地方に財源を移し、自治体の裁量を高めることを含む三位一体の改革は、経済財政諮問会議において議論されたものです。
民間議員の提案に対し、各省庁の意見を聞いたうえで総理大臣が方針を決定するスタイルで議論をすすめることにより、各省に任せておいたら中々進まないような政策が進められてきたのです。
また、政権の支持率を高く保っておくために、各省庁との調整のない官邸トップダウンの迅速な政策実行も増えています。
政策の是非については意見が分かれていますが、コロナ禍の2020年2月に実施された小中学校の一斉休校要請は各省庁との調整のない官邸のトップダウンだったといわれています。無党派層の増加、政治のワイドショー化、さらにSNSの普及等により、一般の人の世論が支持率の低下に直結するようになった昨今、官邸は常に国民の声を気にした政策を早く実現しなければいけない、というプレッシャーにさらされているのです。
このように、各省庁だけでは実現が難しい政策や国民の注目度が高く支持率に直結するものについては、トップダウンで政策を実現することも多くなってきました。
でも逆に言うと、そうでない政策(むしろこちらの方が政策のボリュームは大きいと感じます)については引き続き官僚がボトムアップで政策立案の中心を担っていることは紛れもない事実です。
また、トップダウンで方向性が決まった政策についても、詳細な設計については、やはり官僚が行っています。
ですので、政策を変えたい方、政策と密接にかかわる仕事や活動をしている方々は必ず官僚との接点が出てくることでしょう。
でも、政策を実現するために官僚とコミュニケーションをとったことのある人たちの中にはいやな思いをしたり、官僚を嫌いになったり、官僚と話しても仕方がないので政治家のところに駆け込んだりといった行動をとる人もいるのではないでしょうか。
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