■頭は肉体より、はるかに鍛えがいがある
体調を常に一定に保つことは容易ではない。人間の体はやっかいな
もので変調をきたしやすい。だが、鍛錬すればすぐに体調を保てる
ようになる。
頭の調子を一定に保つことは、それにも増して難しい。体調と同様、
すぐに変調をきたしてしまう。だが、おそらく体調以上に鍛錬の効
果は顕著に現れるはずだ。
われわれは、知識を豊かにし、趣味を洗練させて、自分とその人生
をより豊かなものにしたいと願っている。にもかかわらず、多くの
人がそうしないのは知識欲がないからではない。
まず、意志の力がないからだ。何かをはじめるのは意志の力ではな
ない。継続して行おうとする意志の力がないからだ。そして、頭脳
がほったらかされて錆びついて調子が悪くなっているからだ。
つまり、改善点は2つある。意志の力を養うことと、頭脳の諸器官
をよい調子に戻すことだ。しかも、これらは並行して行われる必要
がある。
★
頭の柔軟体操がある。これはたとえるなら、楽器の演奏に不可欠な
テクニックを磨くための練習だ。たとえば立派な詩や散文を暗誦す
ることだ。これほど、頭の体操になるものはない。
半年間、一週間に20行の割合で暗誦することだ。それだけで、不活
発な頭脳のすばらしい治療となる。頭の体操として暗誦すれば集中
力が必要になる。
自己啓発をする際に備えておくべき重要な能力は、精神を集中させ
る能力だ。なんでもいいから1ページ読み、すぐに読んだことにつ
いて思い出せることをすべて書き記してみることだ。
これを続ければ、必ず頭の体操になるはずだ。自分の言葉でも、筆
者の言葉でもかまわない。一日15分で充分だ。その効果たるや、魔
法のごとしだ。
★
頭を効率的に働かせるべく真剣に努力するなら、ものを書く訓練を
やるべきだ。文を作り、その努力を継続するなら、書く内容はなん
でもいい。
ただし「日記」は、よい方法ではない。日記は、最小限の知的努力
しか払わずに書かれがちだからだ。同じ日々の記録という点では、
日誌のほうがまだましだ。
違いは、日記が自分の事柄や自分のしたことを取り上げるのに対し、
日誌はもっと広範なことを取り上げることだ。人が興味深く観察し
た事柄を書き記すことだ。
日記や日誌がいやなら、エッセイを書くのでもいい。読んだ書物に
ついての簡単な覚え書きでもいい。さらに、自分が特別に感銘を受
けた文章を集めた文集を作るのでもいい。
★
書くということではじめて思考が働く。オックスフォード大学講師
によると「頭脳の効率的な働きというのは、たえず思索に耽ること
で得られるものだ。
たとえば、毎日10分間でいいから、きっちり規則的に、できるだけ
高邁な思想に頭脳を集中させることだ。こうすることで頭脳の効率
的な働きが得られるはずだ。
実際にはじめてみて、自分の決意の強さにある程度確信がもてるは
ずだ。しかも、自分の考えていることを文章に書き表せる人なら、
実行しても、うまくいくはずだ。
自己啓発というと、文学のことを考えがちだ。しかし、蝶や葬儀の
習慣、国境や通りの名前であってもいい。自分に興味があるものな
らなんでもいいのだ。
あまり深く考えない人のほうが、幸せになれるといわれる。だが、
それは大きな間違いだ。間違いなく、より思索する人ほど、幸せに
なりやすいのだ。
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