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【Vol.390】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「アメリカから見た東京五輪」  東京五輪が閉幕しました。競技内容としては、猛暑という環境もあってや や凡戦でしたが、日本選手団としては、田中希美選手、大橋悠依選手、大迫 傑選手など、スポーツ理論を自身で研究して緻密な練習を積み上げてきた選 手が結果を出したことが印象に残りました。  こうした人材は、現役の次のキャリアとして幅広く次世代を育てる指導者 になって行って欲しいと思います。間違っても、タレントや政治家として知 名度を消費しながら他人に利用されるのは避けるべきです。その点に関して は、今回の大会では選手たちがインタビューで自由に語っているのが印象的 でした。  つい数年前までは、有力なスポーツ選手というのは指導を受けている団体 とは別に、広告代理店が用意した「プロダクション」とか「マネジメント会 社」などに所属して、人工的な「コミュニケーション」のトレーニングを受 けさせられていました。負ければ「修正する」とか、「基盤ができた」とか 意味不明の「前向き」言語とかいう不自然な「アレ」です。  ですが、今回はどの選手も自由に語っていて、そうした「カネの束縛」が 緩んでいることを感じました。反対に、そのことが広告キャラとしての価値 というものが減っている、つまりTV広告という媒体効果の崩壊という冷厳 な事実を示しているのかもしれません。コロナ禍における強行実施の中で、 選手へのネガティブな感情が散見されて広告効果が下がっているというだけ ではないように思います。  言語ということでは、開会式と閉会式のアナウンスをした関野浩之さんの 喋りが少々気になりました。滑舌も発声も上手でいいのですが、過剰で定型 化した劇性というのには、どうしてもパロディ感を感じてしまうのです。勿 論、アナウンスのスタンダードが、NHKの和田篤アナという私の感性が古 いのかもしれませんが、しかし関野さんがスタンダードということになって は、逆に関野さんの芸に「異化効果」が消えてしまうのではと心配になりま す。  ついでに閉会式に関しては、全体が地味すぎて何も伝わりませんでした。 ただひたすらにパリのプレゼンの構成と流れのテンポ感がカッコよく、余計 に日本のそれが貧相に見えたように思います。  あと、非常に恥ずかしかったのが宝塚の国歌斉唱でした。開会式における 陛下が他のVIPと同じ段に着座された中に、形ではなく中身で象徴の存在 感を保つという厳しい意思を示されたわけですが、「ヅカガール」の諸氏は まるで大正で時間が止まっているかのように「トップ3人」が壇上で、その 他は壇の下という意味不明をやっていました。こういうことからコツコツと ダメなものはダメということをやっていかないと、世の中はどんどん遅れて 貧しくなっていくのですが、何とも残念な話です。  一つ、今回の開催で予想外だったのは、バブルの位置付けです。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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