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週刊 Life is Beautiful 2021年8月17日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん ファクターXとデルタ株 去年の春、世界中で新型コロナの大流行が始まった時、なぜか日本を含むいくつかのアジアの国では感染者がそれほど増えず、欧米で起こったような医療崩壊を免れることが出来ました。その理由に関しては、「握手をしない文化」「マスクをするのに抵抗がない」「過去の似たようなウィルスが流行したことがある」など諸説ありましたが、日本人を新型コロナから守る何らかの要素(ファクター)があることが確実なため、それを「ファクターX」と呼ぶようになりました。 インドもそんなファクターXに守られていた国の一つでしたが、デルタ株がインドで大流行をした時に、「ひょっとするとデルタ株にはファクターXは有効ではないのかも知れない」と危機感を覚えたのは私だけではないと思います。 心配した通り、日本ではデルタ株が過去にない勢いで広まっていますが、ファクターXとは何なのか?ファクターXはデルタ株に有効なのか? の二つの疑問に同時に答えてくれる論文「ウイルスの感染力を高め、日本人に高頻度な細胞性免疫応答から免れるSARS-CoV-2変異の発見」が、米国の科学雑誌「Cell Host & Microbe」に6月14日に発表されていたことを今になって知りました。 論文を執筆したのは、東京大学、熊本大学、東海大学、宮崎大学などの感染症の専門家たちで、日本語のプレスリリースも日本医療研究開発機構から出ているので、かなり信頼できる研究と見て良いと思います。 これによると、日本人の6割が去年流行した新型コロナウィルスのスパイクタンパクに反応するHLA(人白血球抗原)の一種「HLA-A24」を元々持っており、それがファクターXの正体だったそうです。 これだけでも、素晴らしい価値のある論文だと思いますが、さらにこの論文は、デルタ株と呼ばれるB.1.617系統が持つスパイクタンパクには「L452R変異」と呼ばれる変異があり、これが「HLA-A24」による免疫効果を無効にする働きを持っていることが分かったそうです。つまり、ファクターXはデルタ株から日本人を守ってくれないのです。 これだけ素晴らしい論文が発表されているにも関わらず、私の知る限り日本のマスコミがこれを大きく報道することはなかったし、インドで大流行していたデルタ株が日本に来るのも時間の問題でしかないと強く警告する専門家もいませんでした。 いずれにせよ、緊急事態宣言の効果もなく、ワクチン接種もなかなか進まない状況を考えれば、さらに感染が広がることは確実だし、お盆による帰郷でそれが日本中に広がることは避けようがない状況にあるように私には見えます。 結局のところは、ワクチンを接種する、可能な限り外出を避け、どうしても外出しなければならない場合にはマスクを着用し、満員電車などの人混みを避け、手洗いとうがいを頻繁にするなどして自己防衛するしかないと思います。 バーチャル・スタジオ 少し前に、Microsoft がクラウド型のWindows 365 Cloud PCの提供をスタートする、と紹介しましたが、ハイエンドな開発マシンが必須なゲーム業界では、そんなサービスに対するニーズはとても高いようです。 「Bringing the game studio to the cloud」は Google が自分たちが提供するクラウドサービスの宣伝のために公開したビデオですが、ゲーム業界のニーズをとても分かりやすく説明してくれているので、一見の価値はあります。 ゲームの開発においては、開発マシンは高性能であればあるほど生産効率が上がりますが、(1)購入した開発マシンの減価償却が終わるまでは簡単には買い換え出来ない、(2)最新のマシンは一部のエンジニアが独占的に使い、新人や派遣社員は一世代昔のマシンを使わされるなどの事情があるため、全員に最適な環境を提供することは現実的ではありません。 また、最近ではリモートで働く人やフリーランスとして働く人も増えているため、そんな人たちのために最新の開発マシンを提供している余裕はありません。 そんな時に便利なのは、クラウド上で時間借りした開発マシンにリモートで(オフィスの外から、という意味ではなく、別の端末からリモート・デスクトップなどの仕組みを使って)アクセスしてもらい、それを使って開発する、というアプローチです。このアプローチであれば、減価償却などを気にせずに常に最新の開発マシンを使うことも可能になるし、リモートで働く人やフリーランスの人に対しても、最適の環境を提供することが出来ます。 このサービスを提供する際にGoogleが使っているのはTeradiciの PCoIP (PC over IP) というテクノロジーで、(TCP/IP ではなく)UDP を使って、クラウド側に設置されたパソコンの画面上のピクセル情報だけを高速でクライアント側に送ることにより、あたかも目の前にあるように操作出来るように作られています(AmazonやVMWareも Teradici から PCoIP をライセンスしています)。

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