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徳田安春氏:ウィズコロナからの転換を図らなければ感染は抑えられない[マル激!メールマガジン]

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マル激!メールマガジン 2021年8月18日号 (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/) ────────────────────────────────────── マル激トーク・オン・ディマンド (第1062回) ウィズコロナからの転換を図らなければ感染は抑えられない ゲスト:徳田安春氏(医師・群星沖縄臨床研修センター長) ──────────────────────────────────────  日本はどこでコロナ対策を間違えたのだろう。  元々日本は感染症対策の大原則として、「感染源の排除」、「感染経路の遮断」、「宿主抵抗力の向上」の3つを「感染対策の3原則」として掲げ、少なくとも過去の感染症はうまく凌いできた。この原則は今でも厚生労働省のウェブサイトに掲げられている。今回のコロナ禍で、その原則に沿って感染の抑え込みに成功している多くの国が採用しているのが、前述の3原則をコロナに転用した、「感染源の特定」「感染源の隔離」「水際の強化」のコロナ3原則だ。  日本も単にそれをしっかりやればいいだけ・・・・のはずだった。特に日本のような島国は隣国と陸続きになっている国と比べると3原則の3つ目にある「水際対策」を徹底する上で、決定的に有利な立場にある。コロナの抑え込みに成功している筆頭格として常に名前が挙がるニュージーランドや台湾が島国であることは、決して偶然ではない。  しかし、今回ばかりは日本は明らかに感染症の抑え込みに失敗している。群星沖縄臨床研修センター長で世界のコロナ事情にも通じている徳田安春医師は、今や日本が世界のコロナ感染症の「エピセンター(震源地)」に躍り出ていると指摘する。  感染源の特定・隔離も水際対策も徹底せずに、感染症が抑えられるわけがない。ただそれだけのことだ。そして日本は辛抱強い国民の自粛と、なぜか単独で槍玉にあげられることになってしまった飲食業界の多大な犠牲の下で、少なくとも最近までは欧米ほどの感染爆発を経験せずにきた。しかし、ここに来て従来株よりも遙かに感染力が強いデルタ株の登場によって、遂にごまかしがきかなくなった。 かつて日本より遙かにひどい感染に喘いでいた欧米諸国の多くがワクチン接種で先行する中、感染対策が不徹底の上にワクチンでも出遅れた日本で感染爆発が起きることは避けられないことだった。  徳田氏は今こそ感染症対策の基本に立ち返り、徹底した検査による感染源の特定と隔離、そして水際対策の強化を図りつつ、ワクチン接種を迅速に進めていく以外に、日本が現在のコロナ袋小路から抜け出る道はないと語る。 厚労省も掲げる感染症対策の基本原則は英語ではゼロ・コビッド(zero covid)政策やエリミネーション政策(排除政策)と呼ばれるもので、日本ではこれが「ゼロコロナ」などと呼ばれてコロナ撲滅計画であるかのように大いに誤解されているが、ゼロ・コビッドというのは要するに、感染源の特定と隔離を徹底させ、水際強化によって国外から新たに感染源が流入してくることを防ぐことで、市中感染を限りなくゼロに近づけて行こうという、至って常識的な政策のことだ。  無論、ここまで市中感染が拡がった今、ここからゼロ・コビッドに持って行くのは容易なことではない。しかも、敵は感染力の強いデルタだ。今後、更に強力な変異種が現れないとも限らない。しかし、もし「ウィズコロナ」なる政策が感染症対策と経済の両立を図ることを目的としているのであれば、ゼロ・コビッドこそその両立を図る最良にして唯一の策だと徳田氏は言う。なぜならば、市中感染をゼロにできれば、国内の経済活動はほぼ平常通り行うことが可能になるからだ。 また、いざ市中感染ゼロが実現できれば、検査も通常はサーベイランス検査のみで十分となる。いわゆる社会的調査だ。そして、万が一水際でチェック漏れがあり再び市中感染が発生した場合、徹底した検査によっていち早くそれを察知し感染源を特定し、国際基準で定められた濃厚接触者の定義に則り、対象を隔離することで、市中感染ゼロを一刻も早く取り戻すよう努める。  それを実現するためには、検査体制の整備と水際対策の大幅強化、そして感染者と濃厚接触者を一時的に隔離するための施設が必要になるが、中途半端な両立策で延々と緊急事態宣言を出し続けるよりも、その方がはるかにコスト面でも優位性があると徳田氏は言う。  日本のコロナ対策はどこが間違っているのか。コロナの抑え込みに成功している国が採用している「ゼロ・コビッド」もしくは「エリミネーション」とはどのような政策なのか。今からでも日本はそちらに舵を切り直すことが可能なのか、もしそれをしなければどのような結末が待っているのか、などについて、徳田氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 今週の論点 ・島国ゆえ、水際対策で有利なはずの日本 ・「ゼロコロナ」という言葉に対する誤解 ・ワクチンで各国に遅れをとるなか、得意な「検査」への注力を ・個人でできる有効な対策:CO2メーターと抗原検査 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ■島国ゆえ、水際対策で有利なはずの日本 神保: 今回はあらためて、日本のコロナ対策をテーマにお送りします。ゲストは医師で群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春先生です。さっそくですが、沖縄もいま、新型コロナ、特にデルタ株が猛威を振るっていると聞いています。どんな状況なのでしょうか。 徳田: この数週間、陽性者数がかなり増えて、全国でもトップレベル、この1年半のなかでも最高レベルに達しています。あらゆる部門で医療の逼迫状態が続いているという状況です。 神保: 厚労省のホームページを見ると、人口あたりで東京と比較したときに、沖縄の方が悪いくらいの状況だと。沖縄では9日までの直近1週間の人口10万人当たり新規陽性者数が256.09人となり、これは世界のなかでもかなりひどい水準で、アメリカ全体と比べてもずっとひどい。 徳田: そうなんです。欧米諸国はワクチン接種のペースが早いので、その分、感染者数が減っています。最近はデルタ株の影響でまた増えてはいますが、それでもいまの日本の状況はかなり深刻です。アジアのなかでも、日本はマレーシアやインドネシアとともに、地球上のエピセンター(発生源)とも言われています。

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