久米信行ゼミ「オトナのための学び道楽 」
毎月第1-4 火曜日発行 vol.51 2021/08/24 発 行
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5.久米のイチオシ
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話術は事実も塗り替える?
詭弁から身を護るドキュメンタリーと映画
先日、NHK BSで放映されたドキュメンタリーを見て、衝撃を受けました。その番組名は「地球温暖化はウソ? 世論動かす“プロ”の暗躍」。デンマークで2020年に作られたドキュメンタリーです。
アメリカでは「地球温暖化懐疑論」が今も根強く残る。なぜアメリカで世界の潮流に反するこうした言説が広まったのか。1988年、NASAアメリカ航空宇宙局の科学者が上院で温暖化ガスの影響を訴えた。翌年就任したブッシュ大統領も温室効果ガスの削減を掲げた。しかしその後温暖化に懐疑的な論客が次々とメディアに登場し、科学的な裏付けがないという懐疑論を展開させる。こうした論客の中には温暖化を否定するために石油会社が出資するシンクタンクや団体に雇われたコミュニケーションのプロも数多くいた。地球温暖化はウソだとするアンチキャンペーンの中心人物たちによる生々しい証言によって、真相を明らかにする調査報道。
一言で言うなら、石油業界が雇った「御用学者」と「詭弁家」が行った口八丁手八丁の大活躍によって、CO2削減など気候変動への取り組みが大きく遅れたことを検証するドキュメンタリーです。
私が、このドキュメンタリーをおすすめする理由は、地球環境問題や気候変動について知ってほしいからではありません。事実と関係なく詭弁を弄するプロのおかげで、多くの人が信じ込み、世界が変わってしまうことへの恐怖を味わってほしいからです。
査読もされていない論文、署名許可ももらっていない科学者の署名文を使って、誤った世論操作を行い、それを信じ込む人たちが、それを信じ込む大統領を生み出してしまった怖さ。今、世界中で、全体主義の脅威を感じるニュースがあふれていますが、自由と民主主義を標榜する国であっても、簡単に世論操作が行われていた事実を、オトナのための学び道楽の一環で知っておいてほしいのです。
ただし、今年の5月、ドキュメンタリーにも登場した石油最大手、エクソンモービルの株主総会で、環境を重視する取締役が2名選出されました。資本主義における最大の力、株主の力を正当に使って、経営を変えていくエポックメイキングな出来事でした。このニュースを合わせてみると、現代の危機と希望の両方を感じることができるでしょう。
NHKニュース 2021年5月27日 18時39分
米石油大手「歴史的な敗北」環境派株主提案で取締役2人選任
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210527/k10013053811000.html
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