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【Vol.392】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「新型コロナに関するアメリカの現状」  現状ですが、2020年3月の第1波で苦しんだカリフォルニア、ニュー ヨークなどは、アルファ株の第3波では再度苦しみ、その後はワクチンの劇 的な普及で抑制していたところ、デルタが拡大することでアメリカとしては、 現在の第4波ということで苦しんでいます。但し、こうした地域では接種率 が高い(60%以上)ですので、基本的には第1波のようなパニックにはな っていません。  一方で、南部から中西部の保守州では、2020年夏に第2波で感染拡大 となりましたが、ロクな対策をせずに蔓延。その後、アルファの第3波では さすがに対策をしましたが、これを思い切り緩めたところにデルタの第4波 が来襲、その一方で接種率が上がらないので、現在は最悪の状況となってい ます。  そうした分断がある中で、現在の論点は3つあります。  1点目は今まさに始まりつつある、子供たちの新学期の問題で、例えば 「マスク義務化」をすることの是非です。これは神学論争になっており、フ ロリダやテキサスといった保守州では「マスク義務化の禁止」を州政府が法 制化すると、各学区がこれに対抗する、その一方で保護者が賛否両派に分か れて混沌とするといった状態になっています。12歳未満の子供への接種の 問題も、これから論争が激しくなりそうです。  2つ目は、ワクチン接種の義務化です。まず各大学が2021年8月以降 の義務化を打ち出していますが、これに対して差し止めの訴訟などがあり、 見通しは不透明です。一方で、ユナイテッド航空や一部の金融機関などは、 従業員の接種義務化を打ち出しています。  この点については、左派にも「行き過ぎ」という反発があり、特に「人権 無視だと怒る教職員組合」と「子供の安全第一で接種せよ」という保護者が 対立したり、厄介な問題も起きています。  消費者側としては、NY市がこれから「レストランや劇場は接種者のみ入 場可」という制度を実施しますので、その動向が注目されます。  3つ目は、ワクチンの3回目接種の問題です。既にバイデン政権は3回目 にゴーサインを出しており、2回目を受けた人はその正確に8ヶ月後に接種 することになっています。問題は、これで抗体値を本当に戻せるのか、そも そも1回目、2回目を受けていない人(国内外ともに)を優先すべきではな いか、あるいは折角3回目を打つのなら、最新の変異に対応するチューニン グをして欲しいなど、色々な意見があります。  そんな中で、1つ国民的なコンセンサスとなっているのは、「経済を閉じ ることはもうしない」という方針です。確かに、オフィスワークを在宅から オフィスに戻すかどうか、あるいはマスクやワクチン、検査の義務化など色 々な条件レベルでの論争はあります。ですが、経済はどんどん開けるし、も う閉めないというのは、現時点では与野党ということでも、地域的な広がり ということでも異論はないようです。  これは日本的な観点から見れば「ウィズ・コロナ」ということになるのか もしれませんが、アメリカ人の感覚としては必死に走っている中で、「とり あえずこのようにするしかない」、という感覚なのだと思います。面白いま でに「べき論」が消えているのを感じます。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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