存在感を増す「軍事大国ロシア」を軍事アナリスト小泉悠とともに読み解くメールマガジンをお届けします。
【目次】
●インサイト アルミヤ2021における武器調達・輸出動向
●今週のニュース サハリンに超水平線レーダーを配備 ほか
●NEW CLIPS ちょっと珍しいロシア軍宣伝映画 ほか
●編集後記 人をダメにするソファ
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【インサイト】アルミヤ2021における武器調達・輸出動向
前号でも簡単に触れたように、ロシアでは先週、武器展示会「アルミヤ2021」が開催されました。正確には「軍事技術フォーラム」という言い方をしているのですが(各種シンポジウムなどを並行してやるため)、まぁ本質的には武器展示会です。
というわけで軍需産業にしてみれば売り上げが掛かった大事な商談の場であるわけですが、今年はどうだったのか。簡単にレビューしてみましょう。
まずはロシア軍向け装備調達ですが、アルミヤ-2021の開催期間中には41件の契約がロシア国防省と軍需産業27社の間で結ばれたとクリボルチコ国防次官が述べています。これは武器・装備品1300点以上の納入に関わるものであり、その総額は5000億ルーブル以上になるとのこと(『TASS』2021年8月24日
https://tass.ru/armiya-i-opk/12206047)。
クリボルチコ次官はその内訳について詳しく述べていませんが、戦略技術分析センター(CAST)の集計によると、アルミヤ-2021期間中に結ばれた契約は主に以下のようなものでした(
https://bmpd.livejournal.com/4380952.html)。
・T-90M戦車の調達とT-90をT-90M仕様に改修するための多年度契約(ウラル車輌工場:UVZ)
・T-90のシャーシを用いる2S35コアリツィヤ-SV 152mm自走榴弾砲の調達に関する契約(ウラル輸送機械工場:UZTM)
・TOS-2重火炎放射システムの調達に関する契約(UVZ)
・T-72戦車をベースとする重ロボット化襲撃コンプレクス「シュトルム」の試作契約(ウラル輸送機械工場設計局:UKBTM)
・特殊任務空挺防護車両(タイフーン-VDVと思われる)及び装甲救急車(リンザ)の調達並びにMT-LB装甲兵員輸送車のオーバーホール契約(レムディーゼル)
・ウラン-14無人消防コンプレクス(766UPTK)
・ストレラ-10個人携行防空システム(MANPADS)用新型ミサイル9M333(カラシニコフ・コンツェルン)
・2022年以降のAk-12自動小銃の調達契約(カラシニコフ・コンツェルン)
・イノホージェツ-RU(シリウス)無人航空機コンプレクス5セット分の調達契約(クロンシュタット)
・フォルポスト-R無人航空機コンプレクスの追加調達に関する契約(ウラル民間航空機工場:UZGA)
・Tu-95MS戦略ロケット母機をTu-95MSM仕様に大規模改修するための契約(ツポレフ)
・MiG-31迎撃戦闘機をキンジャール極超音速ミサイル搭載型のMiG-31K仕様に改修するための契約及び迎撃機としての能力を向上させたMiG-31BM仕様に改修するための契約(RSK-MiG)
・キンジャール空中発射極超音速ミサイルの調達契約(おそらく機械製造設計局:KBM)
・3M22ツィルコン艦載極超音速ミサイルの調達契約(機械製造科学生産合同:NPOマシノストロイェーニエ)
・3M14カリブル艦載巡航ミサイルの調達契約(アルマズ=アンテイ航空宇宙防衛コンツェルン)
・2022-2023年にKa-52M戦闘ヘリコプター30機を調達する契約(ロシアン・ヘリコプターズ:VR)
・Tu-160M戦略爆撃機用のNK-32エンジン第二シリーズ8基を2024年までに調達する契約(統一エンジン製造コーポレーション:ODK)
・中型偵察艦(おそらく03182型)2隻の建造契約(ゴーリキー名称ゼレノドルスク造船所)
・12700型タグボート1隻の追加建造契約(中ネフスキー造船所)
・移動式指令ロケット(おそらくヤルス-M ICBMをベースとするシレーナ-M)の調達契約(モスクワ熱技術研究所:MIT)
・2022-2023年にR-416GMデジタル無線通信装置20基を調達する契約(電波技術機器工場)
・その他(無人機用誘導・無誘導弾薬の調達)
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