林田直樹の「よく聴く、よく観る、よく読む」2021年8月31日 第374号より
【音楽のことば】
「なぜ民衆はこんなにも頑迷で理を悟ることができないのだろう、
なぜ彼らは自身の隷属を誇りとするのだろう、
なぜひとびとは隷属こそが自由であるかのように自身の隷属をもとめて闘うのだろう、
なぜ自由をたんに勝ち取るだけでなくそれを担うことがこれほどむずかしいのだろう、
なぜ宗教は愛と喜びをよりどころとしながら、戦争や不寛容、悪意、憎しみ、悔恨の念をあおりたてるのだろう」
(ジル・ドゥルーズ、スピノザの哲学についての記述)
※出典:「スピノザ」ジル・ドゥルーズ著 鈴木雅大訳 平凡社 23ページ
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フランスの哲学者ドゥルーズが17世紀オランダの哲学者スピノザを読み解いた本書は、現代のスピノザ解説書の多くに影響を与えている。なかでも上記の箇所は、ずっと心に残っている箇所。この現代社会の病巣の本質を言い当てていると思う。
そして、実はこの問題意識は、ベートーヴェンも共有していたような気がしてならない。
※参考動画
ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」op.125
ジョルディ・サヴァール指揮 ル・コンセール・デ・ナシオン 他
2021年8月20日、ボン・ベートーヴェン・フェストでのライブ
https://www.youtube.com/watch?v=YVq6l0CmuMk&list=LL&index=2&t=3880s
音楽学者ベアテ・アンゲリカ・クラウスによる最新校訂楽譜(ヘンレ/ブライトコップフ、2020年出版)によるドイツ初演。
サヴァールのベートーヴェンは昨年出たベートーヴェンの中でも最も優れた演奏のひとつで、1番から5番までがリリースされている。10日ほど前に突然この動画がアップされ、驚いて視聴したところ、力と輝きと包容力に満ち、本当に素晴らしかった。古楽オーケストラによる最良のベートーヴェンだと思う。
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