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第144号(2021年9月6日)ロシア新国家安全保障戦略その3 ロシア軍の大規模予備役動員 ほか

小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略
存在感を増す「軍事大国ロシア」を軍事アナリスト小泉悠とともに読み解くメールマガジンをお届けします。 【目次】 ●レビュー ロシアの新国家安全保障戦略を読む-3 ●今週のニュース ザーパド2021演習で1万8000人の予備役を招集 ●NEW BOOKS noteで爆誕していた特濃人材 ●編集後記 理想を言えば30時間くらい欲しい =============================================== 【レビュー】ロシアの新国家安全保障戦略を読む-3  少し間が空いてしまいましたが、今年7月に承認された新しい「ロシア連邦国家安全保障戦略」(http://www.scrf.gov.ru/media/files/file/l4wGRPqJvETSkUTYmhepzRochb1j1jqh.pdf)のレビューその3をお届けしたいと思います。  前回(https://note.com/cccp1917/n/n7cea9745b162)は各分野の具体的な政策について定めた第4章の中から「ロシア人民の保護と人的ポテンシャルの発展」と「国防」の項目を紹介しましたが、今回は国内の法執行・保安・災害対策等を対象とする「国家的・社会的安全保障」について見ていきましょう。  ここで扱われているのは、内務省や連邦国家親衛軍庁(FSVTS)などの国内保安機関、連邦保安庁(FSB)などの特殊機関、そして災害対処や消防を担当する国家非常事態省(MChS)といった省庁の任務です。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------ 第4章 国家安全保障の確保(続き) 国家的・社会的安全保障 41. 国家的・社会的安全の保障は、個人と財産権の安全を守る保証人としての国家の役割を強化し、ロシア連邦憲法体制の基礎・人及び国民の権利と自由を保護するための法執行機関及び特殊機関の活動を効率化し、犯罪阻止のための国家統一システムを改善し、社会の中に法に反する振る舞いを許さないという雰囲気を作るための一連の措置を実現することを可能とする。 42. 一連の措置が講じられているにもかかわらず、ロシア連邦においては、特定の分野で犯罪発生率が依然として高止まりしている。水中生物資源・森林資源利用の分野、住宅分野、金融分野において、財産権を侵害する多数の犯罪が行われている。情報通信技術を用いて行われる犯罪の件数が増加している。過激主義の発露は、社会と政治を不安定化させる影響をもたらしている。 43. 気候変動の影響、森林火災、洪水・増水、技術・交通インフラの老朽化、危険な感染症の流入と拡大を含め、自然災害・技術的災害の発生に関する脅威が依然存在している。 44. 外国と国内の破壊的勢力は、ロシア連邦における客観的な社会・経済的困難を悪用し、社会的プロセスにおける否定的なプロセスの扇動、民族間・宗教間対立の先鋭化、情報空間における操作を目論んでいる。  特殊機関及び外国政府機関による諜報その他の活動は弱体化しておらず、コントロール下にあるロシアの社会団体や個人が利用される場合もある。国際テロ・過激派組織は、プロパガンダ、ロシア国民の勧誘、ロシア領内における非合法細胞の設置、非合法活動に対するロシアの若者の引き込みを強化しようとしている。偽情報を拡散するため、非合法大衆活動組織は、グローバル・インターネット企業の能力をフル活用している。 45. ロシア連邦に残る社会・経済的な諸問題に鑑みて、国家による管理の効率性向上、社会的公平性の確保、汚職及び予算・国家資産の目的外利用に関する対策が求められるようになっている。 46. 国家的・社会的安全保障の目的は、ロシア連邦憲法体制の保護、ロシアの主権・独立・国家的及び領土的一体の確保、人及び国民の基本的な権利と自由の保護、市民の安寧と調和、社会における政治的・社会的安定、国家と市民社会の連携メカニズムの改善、法の支配と法的秩序の強化、汚職の根絶、非合法な侵害に対する国民・あらゆる形態の財産・ロシアの伝統的な精神的・道徳的価値の保護、自然災害及び技術的災害に対する住民及び領域の保護である。 47. 国家的・社会的安全保障の目的は、以下の課題を達成するための国家的政策を通じて実現される。 1) ロシア連邦の内政に対する干渉の阻止、特殊機関及び外国政府機関(ロシア連邦の国益を毀損する個人を含む)による諜報その他の活動の撃退、「カラー革命」の扇動を含めたロシア連邦憲法体制の基礎・人及び国民の権利及び自由に対する犯罪的な侵害の撃退 2) ロシア連邦の領域内で行われる社会的・政治的活動その他の取り組みに関する安全を確保すること 3) ロシア連邦国境の防護及び保護、ロシア連邦の領海・排他的経済水域・大陸棚の保護、国境インフラの近代化、国境・税関・防疫その他の管理に関するメカニズムの改善 4) ロシア連邦の法執行・裁判システムに対する国民の信頼獲得、社会監視システム・国家的・社会的安全保障に関わる組織への国民の参加メカニズムの改善 5) 市民社会機構の発展、社会的に顕著なイニシアティブに対する支援、社会的緊張につながりかねない問題を解決するための市民社会機構及び住民と公権力機関の連携の発展 6) 多数の人が集まる場所、ライフライン施設、軍需産業・原子力エネルギー・核兵器・化学・燃料エネルギー関連企業、交通インフラ、その他の死活的に重要または潜在的に危険な施設における対テロ防護水準の向上 7) 組織及び個人によるテロ・過激主義活動、核・化学・生物テロの実行の試みの予見及び撃退 8) 社会的関係において犯罪が占める割合の低減、違法行為予防のための統一国家システムの発展 9) 原理主義の台頭の予見、過激主義その他の犯罪的現象の予防(特に未成年及び青年に関して) 10) 金融分野、住宅分野、土地・森林・水域・水生物資源の利用を含む経済的分野における犯罪発生率の低減 11) 犯罪による収入の洗浄、テロリズムへの資金供給、麻薬・向精神薬の違法な流通、デジタル通貨の違法な利用を含む情報通信技術を用いた違法行為及び犯罪の予見及び阻止 12) 犯罪に対しては必然的に罰が課されるという原則の実現 13) 国家プロジェクト(プログラム)の実現及び国家国防発注の実施に関するものを含む汚職犯罪、公権力機関・国家が参画する組織における予算の目的外使用及び横領の予見及び阻止、上記の犯罪によって生じた損害の賠償及びその実施に関する責任の増大 14) 国家の発展に関する非効率的な予算執行及び社会的に重要な目標の不達成を招く公務員の行動(怠慢)に対して責任を問う制度の改善 15) 武器、弾薬、爆発物、麻薬、向精神薬及びそれらの前駆物質の違法な流通の発見及び阻止 16) 不法移民対策、移民動向に対するコントロールの強化、移民の社会的・文化的需要と統合 17) 社会的・宗教間・民族間紛争、分離主義的現象の予見及び中立化、宗教的原理主義、破壊的な宗教思想、民族・宗教的独立領域及び社会的、国民の民族・文化的・孤立主義的な独立グループの形成の流行の予見 18) 交通安全の改善 19) 自然災害・技術的災害による非常事態の予見及び処理に関する取り組みの効率性改善 20) 住民の疫学的安全に関する非常事態を引き起こしうる危険な感染症からの住民保護 21) 危険な生産施設、水力発電設備、交通コンプレクス、ライフライン施設の状態に関する気候変動の影響の予測 22) それぞれの任務に応じた法執行機関、特殊機関、消防隊、災害救難部隊の複合的な発展、各組織の技術的装備水準の向上、各機関職員の社会保障の強化、国家・社会安全保障の分野に関する専門的訓練システムの改善 23) 外国及び国際(政府間)司法が政治的理由で下す判決からのロシア国民及び法人の法的保護の保障 ------------------------------------------------------------------------------------------------------

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  • ロシアは今、世界情勢の中で台風の目になりつつあります。 ウクライナやシリアへの軍事介入、米国大統領選への干渉、英国での化学兵器攻撃など、ロシアのことをニュースで目にしない日はないと言ってもよくなりました。 そのロシアが何を考えているのか、世界をどうしようとしているのかについて、軍事と安全保障を切り口に考えていくメルマガです。 読者からの質問コーナーに加えて毎週のロシア軍事情勢ニュースも配信します。
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