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週刊 Life is Beautiful 2021年9月14日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 日本の半導体ビジネスの興亡 最近、このメルマガでも時々半導体ビジネスのことを書いていますが、ここ30年ほどで半導体ビジネスのシェアがどんな変化をしたのかを分かりやすく表示してくれる動画「Top Semiconductor Companies Sales Ranking History (1987~2019)」を見つけたので紹介します。まずは動画を見てください。 この動画は1987年からスタートしています。(半導体に限らず)日本企業が世界市場で大活躍していた時期で、半導体メーカートップ10社のうち5社が日本企業で、特にNEC、東芝、日立がトップ3社で圧倒的な強さを見せています。この時点で、既にパソコンは発売されていましたが(IBM PC の発売は1981年)、まだまだ一般的なツールではなく、半導体の売り上げの大半は、メインフレーム向けのDRAM(ダイナミックメモリ)でした。この頃は、まだファブレスという発想はなく(TMSCが誕生したのが1987年)、半導体メーカーは設計と製造の両方を行なっていました。 しかし、パソコンの普及とともにIntelの売り上げが急激に伸び、1993年に入ると1位の座をNECから奪ってしまいます。日本のメーカーが需要は伸びているもののコモディティ化(低価格化)の進むDRAM市場で戦い続けたのに対し、Intel は付加価値が高く、かつ急速に市場が成長しているパソコン向けのCPU市場で勝負したことが明暗を分けたのです。しかし、この時点でも日本メーカーのシェアは50%を越しており、それほどの危機感は抱いていませんでした。 1995年に Windows 95 がリリースされた結果、パソコンが一気に普及し始め、パソコン用の半導体の需要が爆発的に延び始めます。トップ10の顔ぶれに大きな変化はありませんが(Samsung が松下電気の代わりに入ったぐらいです)、Intel の売り上げは1993年の3倍、日本勢の売り上げも倍近く、と市場全体が急成長しているため、この時点でも、まだ危機感は感じられなかったと思います。日本メーカー全体のシェアは42%に下がったとは言え、この時点ではまだ、米国を抑えて一位です。 2000年になると「Intel 一人勝ち」の傾向がさらに強まりますが、これは他の半導体メーカーの売り上げが横ばい、もしくは若干減少する中で、 Intel の売り上げだけがさらに急増した結果です。日本メーカーのシェアは33%に下がり、米国に越されています。パソコンにより半導体全体の需要は増えたものの、競争が激しいDRAM市場では価格の低下も激しく、日本メーカーにとっては「DRAMでは設けられない」時代になりつつあった時代です。 2004年になると、マーケットが大きく動き始めます。韓国の Samsung と米国の Texas Instruments が売り上げを大きく伸ばして、2位と3位になり、逆に それまで日本勢でトップを走っていたNEC が売り上げを減らして、8位に順位を落とします。ちなみに、ルネサスは三菱と日立の半導体部門が合併して出来た会社です。 右下のパイチャートを見ていただくと、米国のシェア44%は変わらず、韓国が日本からシェアを奪っていることが分かります。この時期になると、品質・歩留まり・自社工場にこだわるあまり、製造コストの削減が出来なかった日本勢が、徐々に市場で価格競争力を失いつつあったのです。インテルとマイクロソフトがタッグを組んでパソコン市場を拡大する中で、「大容量DRAMをより安く大量生産すること」が求められていた時期であり、それに上手に答えた Samsung が日本のメーカーからシェアを奪ったのです。 市場は2007年の iPhone の登場でさらに大きく動き、2010年の段階では、NECの半導体部門はルネサスに吸収され、日本勢は、そのルネサスと、NANDメモリの東芝がランク内に踏みとどまり、デジタルカメラ用のCMOSセンサーを作るソニーが新たにランクインしています。携帯電話向けのチップを提供するファブレス(自社工場を持たないこと)のQualcomm がランクインしたこともこの時期を象徴しています。 2012年にはルネサスもファブレスの流れに逆らえず、一部の半導体の製造をTSMCに委託しはじめます。2013年には車載器向けを除くプロセッサ市場から撤退し、経営悪化の末に産業革新機構の傘下に入ります。Micron(米国)はNANDメモリ市場で、SK Hyrix(韓国)はDRAM市場で売り上げを増やしてランクインした企業です。この時点で、韓国は23%のマーケットシェアを持ち3位、日本は8%で3位へと後退しています。

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