■気持ちよく動いてもらうスキル
人は、ロジックだけでは動かない。多くの関係者と一緒に仕事を進
めていくには、もちろん共通の足場となるロジックは欠かせない。
ロジックは強力な武器だ。
問題は「ロジックをどう使うか」「相手との共感をどう築くか」だ。
理屈では正しい結論も、共感が得られなければ動いてもらえない。
共感を伴った合意があるから人は気持ちよく動いてくれるのだ。
「共に創る」から熱量が上がるのだ。自分が考えたロジックを理解
してもらうのでなく、一緒に考え、力を引き出しながら未来を作る
ことで人は気持ちよく動いてくれるのだ。
★
職場には、人を動かす場面がある。まず「上司や社内の承認を得る」
ことだ。多くのビジネスパーソンにとって身近なのはこれだ。企画
内容やアイデアにOKをもらう場面だ。
次に「社内外に協力を依頼する」ことだ。単純に承認をもらうだけ
では不十分だ。こちらがお願いしたいと思っていることをやっても
らう場面だ。
3つ目は「メンバーを指導する」ことだ。一定の経験を重ねると、
後輩指導やチームマネジメントが求められる。自分より年下の相手
に限らない。年上のメンバーに対する働きかけも含む。
4つ目は「社内外の相手と交渉する」ことだ。社内の他部署や社外
の取引先とのあいだで、交渉条件に合意をしてもらう場面だ。相手
が個人の場合もあれば組織の場合もある。
5つ目は「お客様に提案する」ことだ。営業で自社商品やサービス
を買ってもらう場面だ。いわゆる従来型の営業職だけでなく、イン
サイドセールスやカスタマーサクセスなどの職種も増えてきている。
これら5つの場面では、いずれも相手とのあいだで「共に創る」こ
とが鍵だ。どんなによい解決策やアイデアでも、正論だけでは人は
動いてくれないのだ。
★
気持ちよく動いてもらうには「7つのスキル」が必要だ。まず「想
定する力」だ。これは、ゴール設定をした上で発生する疑問や反論
を洗い出し、どう対応するかシミュレーションをするスキルだ。
イギリスの首相を務めた歴史上の人物、ベンジャミン・ディズレー
リの言葉に「最高を望み、最悪に備える」というものがある。ビジ
ネスシーンでも、こうした心構えが重要だ。
人に動いてもらう局面で最高なのは、気持ちよい合意に至って相手
が動いてくれることだ。反対に、相手との関係が悪化したり、これ
まで積み重ねてきたことが台無しになったりするのは最悪だ。
最高の状態を実現するためのアクションを組み立てつつ、想定外の
事態に慌てない準備をしておくことだ。
「最高」と「最悪」を両方とも考えておくことで、臨機応変な対応
が可能になる。その結果、安心して「共に創るディスカッション」
に臨めるようになるのだ。
★
2つ目のスキルである「段取りする力」とは、相手の発言を引き出
して双方向に進めながら、目的達成に必要な資料やアジェンダの組
み立てに落とし込むスキルだ。
コミュニケーションを双方向にする上で留意すべきは「どのタイミ
ングで、相手にどうボールを渡すか」「どこまで深掘りし、相手に
寄り添うか」「どのタイミングで、どうリードするか」の3つだ。
コミュニケーションを双方向にするには、これら3つのポイントを
考えて設計することが必要だ。
たとえば、全体の時間配分を見繕った上で「資料をどう準備するか」、
「自分がどのぐらい話してから相手に発言のボールを渡すか」など
を考えるなどの準備がこれに当たる。
また、相手の発言に耳を傾けつつ、終盤でどうたたんでいくかをイ
メージしておくべきだ。そうしないと、最後のほうで議論がグダグ
ダになってしまう可能性がある。要注意だ。
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