松尾スズキの、のっぴきならない日常
/ 2021年9月24日発行 /Vol.484(2/2)
「人生に座右の銘はいらない」
読者からの相談や質問に松尾スズキが独自の視点でお答えします!
Q.緊急事態宣言が、またまた延長されました。正直、もはや意味あるとは思えませんが…。さておき、あらためてオリンピック、パラリンピックについて、松尾さんの生の声が聞きたいです。スポーツには興味ないとは存じ上げていますが、この時期に東京であった、という特殊な状況は、物語を作られる方としてなにか感じるところがあったかもしれない、と素人目線で感じています。(40歳、女性)
A.私は、小学校の1年間は足の骨折で、そして、中学高校は謎の腎臓の病気で体育の授業が受けられませんでした。すべて見学です。なので、スポーツ、イコール、退屈とコンプレックスの対象、となってしまった特殊な人間であることを前提とさせてください。
無駄なことは、人間にとって必要だと思うのです。寿命が無駄なほどに長すぎるからです。だから、自分だけの時間だけでは持たず、スポーツを見て気を奮い立たせる、ということも必要だったと思います。ただ、オリンピックには、もともと積極的な気持ちにはなれませんでした。それは不吉な予感がしていた、としか言いようがないのですが、『いだてん』の記者会見のときに、『オリンピックというのは、どうやら行われないらしいですよ』と冗談で発言して、それで結局言い当ててしまったのですから、予感はある程度当たっていたのでしょう。
大きくは、お金のかけ方が尋常でなく、外国人が東京に大量にやってくること、それが不安でした。外国人がいっぱいいる場所が苦手なのと、テロの対象になるのが怖かったからです。なんとかオリンピックの間だけ、東京から逃げ出せないかな、と、そんな事ばかり考えていました。幸か不幸か、コロナで外国人はあまり来なかったのですが、やっぱり赤字は莫大と聞きますし、経済効果がほとんどないのに強行したというのが悔しいです。誰が得したのか? 私以上に悔し涙にくれる飲食店やイベント会社、観光業、そのほかコロナに叩き潰された幾多の人は、どれほど、その「もったいなさ」に傷ついたことやらと思うと、やりきれません。一部、大手広告代理店の方々だけが、たいそう儲かったことでしょう。おめでとうございます。
でも、あれだけ眉間にシワ寄せてオリンピックの強行に反発していたのに、いざ始まると、やんややんやとお祭り騒ぎで報道していたマスコミ連中の手のひら返しだけは、忘れません。
ケラさんは、ほんとにパラリンピックの開会式から外れておいて、色んな意味で命拾いしたと思います。恐ろしい世の中になったものです。
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