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第146号(2021年9月27日)ロシア軍西部大演習を巡る国際関係 ほか

小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略
存在感を増す「軍事大国ロシア」を軍事アナリスト小泉悠とともに読み解くメールマガジンをお届けします。 【目次】 ●インサイト ザーパド-2021演習を巡る国際関係 ●今週のニュース 来年以降のロシア国防費の見通し ほか ●NEW CLIPS ザーパド2021と予備役動員 ●NEW BOOKS ザーパド-2021演習に関する識者の見方 ●編集後記 「ちゃんとした歴史」と「さっと検索して出てくる歴史」 =============================================== 【インサイト】ザーパド-2021演習を巡る国際関係  9月16日、ロシア軍西部軍管区の秋季大演習「ザーパド-2021」が閉幕しました。2017年の「ザーパド-2017」以来4年ぶりの西部軍管区大演習であり、同軍管区及びベラルーシを舞台として9月10日から実施されていたものです。  この演習については開幕前の8月20日、国防省国際軍事協力総局(GUMVS)のエフゲニー・イリイン総局長が大要次のような外国武官団向け発表を行ってしました。 ・演習の実施に向けた具体的な準備は2021年2月に開始され、3月にはロシア軍中央指揮機関の図上演習と西部軍管区及びベラルーシ軍による図上演習が実施された。 ・5月には演習参加国(後述)代表団との参謀会議が実施され、6-8月には参加国部隊を交えた合同戦略演習を行なった ・7月には一連の特別演習(兵站等の術科部隊による演習)を実施した ・演習の主眼は、ロシア=ベラルーシ連合国家の軍事的安全保障の確保と戦闘行動における両国軍の連携強化である。演習の結果、侵略の撃退と連合国家の領土的一体性保護に関する共同行動のバリエーションが策定される ・また、この演習では常時即応軍事編制をベースとした短期間での部隊集団編成と防衛行動及び空挺降下に関する多様な能力が認定される ・演習第一段階(三昼夜)においてはロシア=ベラルーシ合同司令部が合同部隊の指揮と与えられた課題の解決に関する連携と支援を訓練する ・演習第二段階(四昼夜)では友好国部隊の参加も得て連合国家の領土的一体性の回復に関する訓練が行われる ・演習には、西部軍管区の軍事指揮機関と、中央軍管区・空挺部隊・長距離航空隊・軍事輸送航空隊・バルト艦隊の軍事指揮機関の一部が参加する ・演習第二段階では、ロシア領内の演習場においてアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、タジキスタン、インド、キルギス、モンゴル、セルビア、スリランカの部隊が合同訓練を行う。中国、ヴェトナム、ミャンマー、パキスタン、ウズベキスタンからもオブザーバーが参加する ・ロシア及びベラルーシ領内において人員20万人、固定翼機・ヘリコプター約80機、装備品760点(戦車290両、火砲・多連装ロケット・迫撃砲240門を含む)、艦船15隻が参加する ・2011年のウィーン文書対象地域に含まれるロシア領内での参加人員は6400人以下とする ・演習に参加した軍事指揮機関は10月半ばまでに平時の駐屯場所に戻る ・演習の想定は仮想のものであり、対立する仮想国家連合間の紛争がエスカレートしたという状況を基本とする。先進的な軍事力を有する敵が仮想国家「中央連邦」に軍事的圧力をかけようとし、状況が先鋭化して軍事紛争にエスカレートするというものである ・訓練を受ける指揮機関・部隊は、仮想敵の航空攻撃を撃退し、偵察・捜索・防衛・攻撃行動を行なって軍事紛争の局地化と敵の撃滅を図る ・演習の想定は特定の敵を意図したものではなく、敵は仮想敵であって、いかなる特定の国家に対抗しようとするものではない  以上がザーパド-2021演習の沿革です。基本的な想定は過去のザーパド-2009、ザーパド-2013、ザーパド-2017と同様、NATOを仮想敵とした大規模戦争型シナリオと考えていいでしょう。ベラルーシ国防省の発表(https://www.mil.by/ru/news/137264/)によると、今回の演習では外国の支援を受けた違法武装集団、分離主義者、国際テロ組織がまず蜂起を起こし、これを撃退する過程でその支援勢力(つまり西側)との直接衝突に至るというものであってたようで、ザーパド-2017とほぼ同様でした。

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  • ロシアは今、世界情勢の中で台風の目になりつつあります。 ウクライナやシリアへの軍事介入、米国大統領選への干渉、英国での化学兵器攻撃など、ロシアのことをニュースで目にしない日はないと言ってもよくなりました。 そのロシアが何を考えているのか、世界をどうしようとしているのかについて、軍事と安全保障を切り口に考えていくメルマガです。 読者からの質問コーナーに加えて毎週のロシア軍事情勢ニュースも配信します。
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