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森功氏:結局のところ安倍・菅政権とは何だったのか[マル激!メールマガジン 2021年9月29日号]

マル激!メールマガジン
マル激!メールマガジン 2021年9月29日号 (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/) ────────────────────────────────────── マル激トーク・オン・ディマンド (第1068回) 結局のところ安倍・菅政権とは何だったのか ゲスト:森功氏(ノンフィクションライター) ──────────────────────────────────────  9月29日、自民党が新たな総裁を選出し、10月4日には国会での首班指名を経て、新しい内閣が発足する。  今回の自民党総裁選は安倍、菅と2つの政権が不祥事やコロナ対策の失敗で国民の支持を失い、相次いで退陣に追い込まれたことを受けたものだ。当然、次の政権にとっては、何が安倍、菅政権が国民の支持を失うことになった原因だったと考えているかを明確にした上で、それをどう改めようと考えているかが最優先の課題とならなければおかしい。  ところが、メディアが連日連夜、時間を割いて総裁選のニュースを報じ、候補者たちは党がセットした「政策討論会」なる舞台セットの上で、毎日のように侃々諤々の論戦を交わしているかのような演出が続く中、肝心のテーマは置き去りにされたままだ。もちろん肝心のテーマとは、そもそも新首相となる候補が不本意ながら退陣に追い込まれた安倍、菅政権の政治をどう捉えているかだ。 より具体的に言えば、内閣人事局の発足などによりこれまでにないほどの絶大な権力を手にした日本の首相が、いかにしてその権力を国民のために行使し、行使した権力についてどこまで説明責任を果たすのか、またその権力を自らの権力の維持や不祥事の隠蔽のために使うことが許されるかどうか、などだ。これは政策以前の、日本の民主主義のあり方に関わる最も基本的な問題と言っていいだろう。  しかし、菅首相が辞意を表明してから総裁選が行われるまでの約3週間の間、自民党総裁選がメディアをジャックしたおかげで、菅政権下で低迷していた自民党の支持率は順調に回復している。まあこれは当初から予想されていた、まさに陳腐なシナリオに過ぎないのだが、既存のメディアが無批判にそのシナリオに乗っかったため、現実がそのシナリオ通りに進むことを許しているのが現状だ。  これでは安倍、菅政権の政治体質が総括されることなく、ビジネス・アズ・ユージュアルでこれまでのような政治が続くだけだ。それは自民党にとっても日本にとっても、決して好ましいことではないだろう。  政権内部や官僚機構に深く食い込み、政治の利権構造や癒着、腐敗の実態などを克明に報じてきた大宅賞作家でノンフィクションライターの森功氏は、安倍、菅政権が露わにした最も深刻な問題は、首相に権力を集中させた結果、本来の目的だった政治主導が実現するのではなく、むしろ必ずしも能力が高いとは言えない政治家が、政治に擦り寄ることで絶大な権力を手にした官邸官僚の神輿に担がれ、思いつきで人気取りの施策を繰り返す薄っぺらで無責任な権力行使が横行するようになってしまったことだと語る。 もちろんその中には失敗を隠蔽するための権力行使も含まれる。  しかし、今回のコロナ禍のような危機的な状況に見舞われたら最後、どんなに誤魔化しや隠蔽のために権力をフル動員しても、ここまで大きく拡がった感染を全て隠すことはできない。それが安倍、菅政権下でことごとくコロナ対策が失敗し、世界一の病床数を誇り、欧米と比べれば感染者数も比較的少ないはずの日本が、なぜか世界で最も長期間にわたり緊急事態宣言下での行動制限を強いられることになってしまった根本的な原因だった。  今週は森氏とともに、安倍、菅政権とは何だったのか、官邸官僚政治のどこに問題があるのか、新政権が問われる政治体質の変革とは何なのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 今週の論点 ・消去法で生まれた菅政権と、続く権力争い ・“セクシー”に見える安倍と、価値観のない菅 ・菅政権で加速した「劣等感政治」 ・このまま官邸官僚政治が続けば、コロナ対策はできない +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ■消去法で生まれた菅政権と、続く権力争い 神保: 自民党総裁選は実質的に総理を選ぶ選挙ではありますが、自民党員は110万人と言われていて、投票権があるのは日本の人口の1%に満たない。そのなかで、もちろん数字が取れるということでしょうが、ここまで報道に時間が割かれて、どうしろというのかと。 宮台: 傍観者でいる以外の方法がないから、ギャラリーとして楽しめということでしょう。報道機関としては数字が取れるということもあるし、もうすぐ総選挙があるなかで、電波のオキュパイが自民党にとっても官邸にとっても好都合そのものだ、ということもあるでしょうね。 神保: 候補者はいろんなことを言っていますが、言うだけ番長というか、別に選挙公約というわけでもない。ただ結局、そうこうしているうちに実は、ものすごく下がっていた自民党に対する支持率は上がっているわけですよね。 宮台: 10ポイント以上、上がりました。「この人なら大丈夫かな」と思えば、その候補者に引きずられて、自民党支持になってしまったりする。報道を見ていて、「この人が総理になったら、どういう政権になるのか」というカラーについてのぼんやりとしたイメージが得られるということがお土産なんです。 神保: 果たして本当にそれでいいのか、というのが今回の大事なテーマですね。僕から見ると、論争しているような部分も含めて、すべて“なんちゃって感”であって。確信犯なのかバカなのか、メディアもそのまま乗っかってしまっている。

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