第２５３回「リアルな性愛の世界」

今から数年前のお話です。 僕は、ＡＶ業界を舞台にした小説を書こうと思っていて いろいろ取材をしていました。 そんな時、知り合いの舞台俳優さんから、 「昔の仲間でＡＶの監督をしているのがいるから インタビューできるようにアポとってあげましょう」と言われて、 とある中華料理屋の上の小さなビルに伺ったことがあったのです。 彼のＡＶ会社は、素人のナンパ物を撮っている会社で、 当たり前ですが、顔はよく知らない人でした。 事務所は、まあ、撮影用の機材とかが転がっていて、 雑然としたもので、特に色っぽいものもなく、 まあ、普通の制作会社みたいでした。舞台裏なんてものは そんなものでしょう。 そこで、彼がＡＶ監督になった経緯などを聞いたのですが、 まあ、彼、はじめは、普通の舞台劇の劇団員をやっていた らしいのですが、いろいろ考えるところがあって、 ＡＶ業界のほうに転向したのだそうです。 そしたら、今まで、全然食えなくて、苦労していたのに、 金は儲かるわ、女の子に苦労はしないわ、といいことずくめで ＡＶ業界に入ったことをつくづく幸せに思っている、 とのことでした。 「なんで、自分は、今まで、こんなに苦労していたんだろう。 バカみたいだったな！早くＡＶ業界に入ればよかった」 つくづくそう思って、今までの自分に、むしろ 腹が立ったんだそうです。 「ヒロＮさん、あなたもどんな小説を書いているのか 知りませんが、早くこっちに来ればいいんですよ。 彼女とかできなくて、悶々としている青年とかは、 ＡＶ業界に入ることをお勧めしますよ。 女の子なんて、こんなにチョロいものなのか、って