「テレワーク後進国、日本の問題」
コロナ禍を通じて浮き彫りになった問題として、日本ではテレワークの活
用が進まないということが言われていました。2020年の春にはかなり強
引な形で理由が進んだものの、現場では不評であり、その後は一進一退とい
う格好になっています。どうしてなのか、このメルマガでは、これまで幾つ
かの仮説を提示してきました。
まず、紙、つまり原本とハンコ、そして紙の郵便物に縛られた事務作業の
環境があるという問題があります。続いて、ネット環境におけるセキュリテ
ィ確保だとか、セキュアされた中での自由なチャット環境の必要性など、イ
ンフラの問題もあると思います。ネット環境や、PCなどハードウェアへの
投資不足という問題もあるでしょう。
更に言えば、日本のあらゆる制度設計が「グレーゾーン」を前提としてお
り、建前としての実定法と、本音としての運用がかけ離れているという議論
もしてきました。そのために、仕事を回すためには「本音の運用」をしない
といけないが、その詳細については堂々と語れないために、対面で口承伝承
しないと安心できないという問題があります。これは、単にテレワーク推進
というだけでなく、日本の生産性を考える上での結構大事なポイントだと思
います。
更に考え方を進めると、いわゆる「日本の終身雇用ホワイトカラー」にと
っては、職場というのは城のようなものであり、転勤命令つまり参勤交代を
義務付けられていることと同じように、幕府イコール「ご本社」に縛られて
いるという問題があると思います。
単なる形式だと言えばそれまでですが、この登城と参勤交代というのが、
それこそ江戸時代の「士農工商」とか「旗本、御家人、外様、陪臣」などの
序列、そして、大大名から小名まで「江戸城における控えの間に序列があ
る」のと同じように、現代でもヒエラルキー制度として残っているのです。
その目的ですが、単に高齢者の役員とか、過去の実績がある(だけ)の執
行役員などが威張っているというだけでなく、そのヒエラルキーがあるため
に、決定ができ、同時に決定への責任から逃げられるという複雑怪奇な集団
合議制を作り上げているわけです。それ自体が非生産的であり、現状維持型
の判断の源、イコール国家衰退の元凶であるわけですが、江戸時代の侍が
「そのように行動するしかできなかった」のと同じように、そのようなヒエ
ラルキー制度を維持するしか、組織を動かす術を知らなかった、それが現代
の日本の民間企業に巣食う官僚制の正体なのだと思います。
だとするならば、組織を維持するにはどうしても職場で対面して、相互の
序列確認をしないといけないし、能力とはいかに乖離していても、その序列
に基づくヒエラルキーを使って組織を動かさないと安心できないのです。
そうなると、リモートの会議をやる中で、何の権限もない若手が、情報と
ノウハウを握って上役に対抗する、上役はこれに対して画面内では権威を示
すことはできないというのでは、組織は回らないということになります。
(続く)
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