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週刊 Life is Beautiful 2021年10月26日号:M1 Pro・M1 Max の写真に隠された秘密

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん M1 Pro・M1 Max の写真に隠された秘密 Apple が、M1の後継チップである M1 Pro、M1 Max を搭載した新型 MacBook Pro を発表しました。私の MacBook Air に搭載された M1 ですら十分に高性能なのに、それをさらに CPU ・GPU の性能をそれぞれ二倍にしたのです。 Intel 系のチップでは、消費電力あたりの性能では、これらのラインアップとは戦えず、かと言って、ARM系のチップの性能はいまだに M1 に大きく見劣りする段階でのこの発表は、他のパソコンメーカーにとっては大きな衝撃です。ARM チップを Nvidia や Qualcomm から購入するしかないパソコンメーカーは、「Apple に対抗できる武器」を持たずに戦っているようなものです。 高性能チップの Nuvia を買収した Qualcomm には大きな期待が寄せられているだろうと思います。Microsoft が(Apple と対抗するために)自社製チップを開発しているという噂もありますが、それよりは Qualcomm との共同開発をした方が、手っ取り早く結果が出せると思います。 ちなみに、この発表を見て、一番驚かされたのは、432mm という M1 Max の大きさです。120mm の M1 の 3.6 倍の大きさです。 この業界では、チップを大きくすることは、歩留まり(製造したチップのうち、ちゃんと動くものの割合)の面で不利になることが知られています。チップを作る際には、どうしても若干の欠陥が生じ、歩留まりが75%程度になってしまうことはごく当たり前です。 120mm のチップの歩留まりが75%だった場合、同じプロセスで 240mm のチップを作ると、歩留まりは 56% に下がります。240mm のチップを2つに分けて考えればそれぞれの歩留まりが 75% なので、両方ともちゃんと動く可能性は 75%の2乗で 56% に下がるのです。 432mm のチップは 3.6 倍もあるので、歩留まりは35%に下がってしまいます。つまり、100個チップを作っても、ちゃんと動くのは35個しかないのです。 Apple が M1 を搭載した MacBook を発表したのは去年の末ですが、その時に、廉価版に関しては GPU コアの数が8ではなく7だったことを覚えているでしょうか?これは、8コアのM1チップを製造し、テストした結果、GPUのコアの一つに欠陥があるものを廉価版として販売する、というテクニックを使った結果なのです。 その知識を持った上で、今回の M1 Pro と M1 Max の写真を見ると、一つの面白いことが分かります。M1 Pro は、ちょうど M1 Max の下5分の2を切り捨てたようなデザインになっているのです。 これを見ただけで私は、直感的に「怪しい」と感じたのですが、その中身を丁寧に見るとさらに疑惑は深まります。 M1 Maxのチップで最も大きな面積を占めているのは、GPU で、ここにGPUコアが32個搭載されています。次に大きのがCPUで、コアが十個搭載されています(高性能コアが8個、低消費電力コアが2個)。NPUとよばれる Neural Engine は、8コアづつ2箇所に別れて16コア搭載されています。 つまり、上の M1 Pro の画像が正しいのであれば、半分になったのは GPU だけでなく、Neural Engine のコアも半分になっているはずです。 しかし、Apple の発表資料を見ると、M1 Pro と M1 Max の違いは、GPUコアの数とメモリのアクセス幅のみであり、Neural Engine に関しては、どちらも16コアと発表しているのです。 つまり、Apple の発表資料にある M1 Pro の画像は、単に M1 Max の一部を切り取っただけの画像であり、そんなチップは存在しないのです。 M1 Pro は、M1 Max として製造した上で、32コアのGPUの一つにでも欠陥があるものを、あえて他のコアも使えなくして16コアにしたものを M1 Pro として販売しているだけなのです。 誤解して欲しくは無いのですが、私は 決して M1 Pro を搭載した MacBook Pro が不良品だと言っているわけではないのです。消費者が望むような性能のチップ(M1 Max) を今の技術で作るのはあまりにも歩留まりが悪いため、それだけではビジネスとしてなり立たないから Apple は M1 Pro を導入しただけの話なのです。

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