松尾スズキの、のっぴきならない日常
/ 2021年11月12日発行 /Vol.490(2/2)
「人生に座右の銘はいらない」
読者からの相談や質問に松尾スズキが独自の視点でお答えします!
Q.昔の松尾さんが書かれるコラムなんかには、失敗談がよくあり爆笑させて頂きましたが、最近、そういうのが減った気がします(勘違いでしたら申し話りません!)。松尾さんが生き方上手になったからでしょうか? 松尾さんの最近の失敗談が聞きたいです!(48歳、女性、主婦)
A.失敗ですか。けっこうこのメルマガには忖度せず書いているような気がしますが……。今は、コラムは『GINZA』で1本書いているだけですからね。あんまり『GINZA』と爆笑は似合わないかな、と。単行本化もされたし、もうすぐあのコラムも終わらせて、別のテイストの連載に切り替えようと考えているんですが、いったいなにを書けばいいやら考えあぐねているところです。
失敗と言えるかどうかわかりませんが、昨日、夜中の2時ぐらい、寝る前にトイレに行ったのですが、そのまま眠りこけてしまったようで、3時近くになって隣に自分がいないのに気づいた妻にドアを叩いて起こされました。便器に座ったまま40分ほど寝むりこけていたみたいです。起きた後、「風邪引いたらどうすんだ」と、めっぽう怒られました。さほど酒を飲んだわけでもないのに。夜中にYouTubeで「岸田戯曲賞の選考評を解説する」みたいな番組を見つけ、つい長々と観てしまったのがいけなかったようです。普段は1時半くらいには寝るんです。2020年には受賞作がなかったようですね。コロナ禍で、上演される戯曲自体が少なかったのかと。動画で一人一人の審査員の評を読み上げられるのですが、そんなおそろしいことが行われる時代になろうとは……。その場に自分がいなくて、ほんとによかったと思います。
Q.女性上司の口グセが「男のくせに」なんですが、これってセクハラにはならないんですかね? こちらはそれほど気にはいていませんが、男性上司が同じようなことを言って問題になってたりします。フェミニストの人は、そういうことを言われた女性が気にしていなくても、「男性社会に飼いならされて麻痺している。よくない!」とか言いますが、なるほどと感じる一方で、大きなお世話にも思えたり。女優さんを演出する立場の松尾さんの、セクハラについてのスタンスや気を付けていることがあれば聞いてみたいです。(38歳、男性、会社員)
A.ラブシーンを要求したり、肌の露出を要求したり、仕事自体がじゃっかんセクハラめいた部分もあるので、なんとも難しいです。昔は、キスシーンがなかなかできない俳優2人に「隣の部屋でキスの練習してからきて」などと平気で言っていたのですが、今考えるとどうなんだそれ、とは思います。まあ、自分が目の前にいたらやりにくいだろうなという配慮も合ったのですが、別部屋で2人でキスしてたら、それは、ほとんどキスですからね。変な仕事をしてるなあという実感があります。今は、別部屋で、は言えませんね。
で、ほとんどキスシーンは「本番でぶっつけ」という判断になりますが、本番で不本意なキスをされたら、それはそれで作品として質が下がるわけで、まあ、それ以前にコロナ対策で本番でもキスはしないということになったのですが。『108』のときは、AV女優さんをいっぱい呼んで自分とのファックシーンを撮影したのですが、前張りをつけてもらうという段になって、とても不思議がられるわけです。彼女たち、普段は前張りなんかつけていたら仕事できませんから。「いやいや、つけてください」と言ったら、「あれ、今日は入れないんですか?」と。いや、入れませんよ! どういう説明を受けてきたんだろうと笑ったのを思い出します。
この仕事をやっていると、「セクハラってなんだろう」と、はたと頭を抱えることもあるわけです。楽屋でも、半裸の姿で「こないだ、友達の友達に3万でやらせたー」とか平気で話してて、すごい世界があるなあ……なんて、あれ、何の話でしたっけ。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)