僕は、黒澤さんの画集は持っていますが、
本物の絵を目の前にしたのは初めてだったんです。
画のサイズは決して大きくはないのですが、
その存在感に圧倒されました。
これも、
筆致が凄い。
力強さと、
「描いて、やがて ”映画” にしたい、思いを伝えたい」
という気迫が伝わってきます。
油性の絵の具、水彩の絵の具、ボールペンなど、様々なものを使って、
グイグイと描かれている様子。
この絵の前に描いて、下に写ったのであろう、
あるいは、鉛筆で何度か描いて、消したのかもしれない筆の跡までが紙についていて、
紙が立体的に見えるほどによく判ります。
この映画は、
実は次作『乱』の映画化実現への足がかりとして、作られたと言われています。
『乱』の脚本は、『影武者』よりも前に書かれていたのです。
しかし、あまりにも予算がかかりすぎるため企画は動き出さず、
その間に構想が生まれたのが、
黒澤作品の時代劇の中で、唯一、実在の戦国武将(武田信玄)を描いた『影武者』です。
しかし、
この作品も、構想が実写化に至るまでに困難を極めました。
東宝が提示した総予算と黒澤プロ側が考えた予算案に、数億円もの開きがあったのです。
1980年代でも「10億円」を優に超えたと言われる映画の予算を集めるまでの間、
「この”影武者”に託した私のイメージも、また誰の目にも触れずに葬られるのか!」
と、たまらなくなった黒澤監督は、
フィルムでなくとも、動かぬ画であろうとも、世界の人たちに見てもらいたい、、、
その一心で、この1つの映画の実現に向けて、”200枚” を超える絵コンテを描いたといわれています。
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